分裂酵母における環境識別と性的分化制御の分子機構
【研究分野】分子遺伝学・分子生理学
【研究キーワード】
分裂酵母 / cAMP / A-キナーゼ / 減数分裂 / RNA / RNA結合タンパク質 / 有性生殖 / 接合 / 接合フェロモン / フェロモン受容体 / 情報伝達 / 栄養源 / 性的分化 / アデニル酸シクラーゼ / Gタンパク質 / 接合フェロモン受容体 / 転写因子 / HMG / DNA結合タンパク質
【研究成果の概要】
分裂酵母は炭素源や窒素源の状態を感知・判別し、新たな細胞分裂周期を開始するか、接合・減数分裂への性的分化を開始するかを決定する。接合の際には、接合フェロモンを受容することで相手型細胞の存在を認識する。このような性的分化開始の決定に至る一連の分子機構を解明することは、細胞の環境認識、細胞周期の制御、あるいは細胞機能分化など、細胞生物学の基本問題の理解に大きな貢献をもたらすと考えられる。本研究により当該年度に得られた新知見は以下の通りである。1.分裂酵母の有性生殖開始に必要な遺伝子群が窒素源飢餓により転写誘導されること、さの際にcAMPが栄養状態を反映し、情報伝達を仲介することを、cAMP依存性タンパク質リン酸化酵素(A-キナーゼ)の触媒サブユニットの遺伝子を単離してより確実なものとした。2.減数分裂開始に関わる重要な因子であるmei2遺伝子産物がRNA結合タンパク質であることを証明し、Mei2タンパク質の機能が、従来から知られている減数分裂前DNA合成開始のみならず、減数第一分裂にも必須であることを示した。さらに、減数第一分裂を推し進める際にMei2タンパク質と複合体を作って機能する、長さが約0.5-kbでPoly(A)tailをもつmeiRNAを同定した。meiRNAは減数分裂に特異的に必要とされることが明瞭に証明された初めてのRNA分子種である。3.分裂酵母の様々な有性生殖関連突然変異株につき、その欠損を相補することができる遺伝子を高等植物のシロイヌナズナから数多く単離し、酵母を宿主とする機能相補の手法が、高等生物からの遺伝子クローニングの有力な戦略であるということを示した。ただし、得られた遺伝子が植物体で有性生殖過程に関わっているか否かの証明は今後の課題である。同様な手法で、高等動物から有性生殖関連の遺伝子をクローニングする試みも推進した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
渡辺 嘉典 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
飯野 雄一 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(A)
【研究期間】1991 - 1994
【配分額】26,900千円 (直接経費: 26,900千円)