DNAマイクロアレイを用いた赤痢アメーバ病原機構の網羅的解明
【研究分野】寄生虫学(含衛生動物学)
【研究キーワード】
赤痢アメーバ / 病原機構 / システインプロテアーゼ / トランスクリプトーム / 小胞輸送 / 感染症 / 腸管寄生虫 / 腸管原虫 / 病原性 / 網羅的解析 / 寄生
【研究成果の概要】
赤痢アメーバの病原機構の網羅的理解を目的に、全遺伝子をカバーしたDNAマイクロアレイを用いて、遺伝子発現の解析を行った。TIGRデータベースに存在するタンパク質をコードする全遺伝子9435のうち、重複を除いた7712遺伝子をカバーするアレイを作成した。ラボの標準株では80%以上の遺伝子の発現が確認された。次に、動物への反復感染とインビトロ培養により、遺伝的背景が同一で、病原性の異なる株を樹立した。これらは哺乳動物細胞の破壊、肝膿瘍の形成で明らかな病原性の相違を示した。更に、これらの株間での遺伝子発現比較を行った結果、200を超える遺伝子の発現量が変化していた。病原性に相関して発現が変化している遺伝子は30あまり、逆相関している遺伝子は約170であった。更に、病原性への関与が明示されているシステインプロテアーゼ(CP)の細胞内輸送、分泌を調節する内在性タンパク質ICPを発見しその機能を解明した。ICPは2種類のアイソタイプとして存在した。ICP2はシグナルペプチドをもち、ICP1はもたず、ICP1は細胞質に、ICP2はリソソーム・ファゴソームに局在した。いずれの組換えタンパク質も主要なCP(CP1,2,5)をいずれも阻害する能力を有した。特異抗体を用いた免疫沈降により原虫内での結合が直接証明された。CPとICPの細胞内での分子数比は約1000対1であった。更に、ICP1,ICP2を過剰発現した形質転換体における細胞内・分泌CP活性は60-90%減少していた。以上の結果、ICPは細胞内の複数の場所で、CPに結合・不活化・分解コンパートメントへ動員することでCP量・活性を調節していることが明らかにされた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中野 由美子 | 国立感染症研究所 | 寄生動物部 | 主任研究官 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】14,600千円 (直接経費: 14,600千円)