毛細血管内における物質輸送担体のマルチスケール解析と物質移動の制御
【研究分野】流体工学
【研究キーワード】
微小循環 / 赤血球 / ドラッグデリバリーシステム / 脂質二分子膜 / 血液 / ジャイアントベシクル / マイクロ流体 / マルチスケール解析
【研究成果の概要】
毛細血管内を変形しながら移動する赤血球やドラッグデリバリ用マイクロカプセルなどの分散体では,毛細血管内での力学的特性と膜を介しての分子レベルの物質輸送が密接に関連している.生体内におけるこれらの要素の影響を定量的に評価するためには,生体膜を介して細胞内に取り込まれる分子レベルの物質輸送から連続体レベルでの血流・分散体の流体・構造連成までマルチスケール性を考慮した解析が必要である.本研究では,これらの複雑な因子を合理的かつ精度良く解析するためのツールの開発を行なうために,単純せん断流中のベシクルの変形に関して知見を得て,マルチスケールモデリングにおいて重要となる因子を抽出することを目指す.
本年度は,せん断流中を変形するジャイアントベシクルに関して,昨年度作成した装置を用いて膨潤率の異なる様々な条件で実験を行なった.また,Immersed Boundary法を用いた数値計算による結果および既存の理論との比較を行い,以下の知見を得た.
・本実験条件下においては,ベシクルは形を一定に保ったまま移動するTank-Treadingと呼ばれる運動形態を呈する.
・ベシクルは,膨潤率の低下とともに,軸がより水平に傾いた運動をするが,この結果に関して,実験・数値計算・理論は定量的に良好な一致を示す.
・数値計算および理論において仮定されている膜モデルは互いに異なり,また実際の実験で用いられている膜の力学的特性は,これらどちらの膜モデルとも異なると考えられるが,ベシクルの傾き角は膨潤率のみにより整理できる.これは,ベシクル膜の力学的条件よりも膨潤率で記述される幾何学的拘束条件が重要な因子であることを示している.
・ベシクル内部の流動構造を可視化するのに成功した.膜面速度の見積もりより,ベシクル表面は流動的であり,複雑な2次流れが存在している可能性がある.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(A)
【研究期間】2003 - 2005
【配分額】29,380千円 (直接経費: 22,600千円、間接経費: 6,780千円)