結露・乾燥過程における微量腐食機構とステンレス鋼の発錆機構
【研究分野】材料加工・処理
【研究キーワード】
発錆機構 / ケルビン法 / 微量腐食 / ステンレス鋼 / 液滴 / 液膜 / 限界電流密度 / 電気化学
【研究成果の概要】
ステンレス鋼の大気腐食機構について,結露によって形成される液滴,液膜による腐食のカソード反応,特に酸素還元反応の限界電流密度および腐食反応による溶液組成の変化とその腐食速度に及ぼす効果について調べることを目的とし,液滴の形状(直径と厚み)によるカソード電流の大きさと分布を理論的に求めるとともに実測し,電流分布の偏りと腐食形態の関係を調べ,液滴の乾燥・凝固塩の吸湿過程で生じる濃厚溶液中での酸素還元電流の塩濃度依存性を液滴およびバルク溶液中で調べた。
液滴内のカソード電流分布を計算した結果では,液滴外周部(メニスカス付近)に電流の集中が起こることが示されたが,周辺部に環状電極を設置して電流を測定したモデル実験では,予想されたほどの電流増加は観測されなかった。これは,溶液の表面張力により液滴の厚さが酸素の定常拡散層の厚さに比べてかなり大きくなっていること,この状態では電流増加は外周のごく一部にしか起こらないことが確認された。それ故,液滴が乾燥してゆく過程で液膜の厚さがある程度小さくなった場合に腐食が進行することがわかった。
一方,均一な液薄膜を形成し,その下でのカソード反応をKelvin法により調べる実験では,液膜の厚さが減少するに従い,酸素の拡散限界電流が増加するが,約10μm以下になると電流が減少しはじめることがわかった。前者については,液膜の厚さが酸素の定常拡散層の厚さより小さくなることにより説明されたが,後者については,液薄膜内の電流線分布の不均一または溶液のpH変化に伴う酸素溶解反応速度の減少によるものと考えられ,今後確認を行うことが必要である。
溶液の塩濃度の影響については,塩濃度の増加に伴ってアノード反応は加速されるが,酸素の飽和溶解度の減少によってカソード反応は抑制されることが示された。それ故,腐食反応が最も速いと考えられる液滴の乾燥終期および凝固塩の吸湿期の腐食速度は,カソード反応の速度によって支配されていることが明らかとなった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
西方 篤 | 東京工業大学 | 工学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1993
【配分額】1,900千円 (直接経費: 1,900千円)