低レイノルズ数における遷音速ファンの性能解析
【研究分野】航空宇宙工学
【研究キーワード】
数値解析 / 遷音速 / 遷移 / Large Eddy Simulation / 圧縮性流れ / 境界層 / 数値シミュレーション / LES
【研究成果の概要】
本年度は、遷音速ファンの性能解析において重要な技術課題である、衝撃波-層流境界層干渉に誘起される境界層遷移の数値シミュレーションを目標に昨年度開発したLESコードの改良を行い、流れ場の解析を行った。
まず、亜音速平板境界層のバイパス遷移のシミュレーションを行い、(1)実験結果とほぼ同じ位置で遷移が始まること(2)乱れ強さに応じて遷移位置が前後すること、を確認した。続いてGarnier & Sagaut(AIAA J. 40(2002))と同様の衝撃波-乱流境界層のシミュレーションを行った結果、圧力の2階微分に基づく衝撃波センサ関数では微弱な衝撃波を識別できないことが分ったため、速度ベクトルを用いた補正を行った。また、Roeスキームでは散逸過剰であったため、衝撃波付近の対流項評価にWENOスキームを採用した。以上の改良を施した結果、速度・乱れ全布や剥離位置が実験と一致する良好なシミュレーション結果を得ることができた。遷移と衝撃波-境界層干渉の双方で良好な結果が得られることを確認したのち、本題の衝撃波-層流境界層干渉に誘起された遷移のシミュレーションを行った。NASA MEMO 2-18-59Wの実験と同条件のシミュレーションを行った結果、実験と同様の摩擦係数分布を得ることが出来た。さらに流れ場を詳細に検討した結果、衝撃波が強い条件では剥離泡中ほど剥離剪断層で乱れが成長し始め、乱流遷移してから最付着するのに対し、中程度の衝撃波強度の場合には剥離泡後半から最付着点にかけて縦渦が成長し、最付着点下流で縦渦が崩壊して遷移に至る様子を明らかにすることができた。
以上から、本研究により従来のRANSベースのCFDコードでは解析困難であった衝撃波-層流境界層干渉に誘起される境界層遷移の数値シミュレーションを解析できる数値解析コードを開発し、さらに流れ場の詳細を明らかにすることができた。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,900千円)