実環境下におけるキャビテーションの予測の高度化:溶存気体効果の解明とモデリング
【研究キーワード】
キャビテーション / 流体機械 / 溶存気体
【研究成果の概要】
本研究では,流体機器のキャビテーション性能の予測の高精度化を目指し,支配的実環境因子の一つである液中の溶存気体の効果に着目し,機械の内部流れとの類似性に基づいて選定した基礎的形状の流動系を対象に,①キャビテーション気泡の内圧の決定機構ならびに気液界面での物質伝達機構の実験的解明,さらには②物理現象に根差した溶存気体効果の流体解析モデルの構築を行う.
①については,前年度に引き続き翼形および二次元縮小拡大流路を対象に実験計測を行った.翼形の実験では,流れがはく離し大規模な非定常流動を呈する高迎角を対象とした計測を行い,キャビティ内の不凝縮ガスの分圧が周期的な大規模流動によるキャビティの排出効果により平衡圧に対して非常に小さいことが分かった.また,主流圧力の増減に伴う翼表面圧のヒステリシスが大規模非定常流動と関係することを見出し,国際会議で公表するに至っている.一方,二次元縮小拡大流路の実験では,不凝縮ガス分圧の計測精度向上を実現してその成果を国際誌ASME J. Fluid Eng.にて公表するとともに,キャビティ内圧の決定機構の解明には液中溶存気体の拡散挙動の解明が重要であると考え,気流の圧力計測手法である感圧塗料の原理を応用し,主要な溶存気体種である酸素の液中濃度を可視化計測する手法を検討した.簡易的な実験により液中濃度分布が計測できることを実証,さらには流動場中のキャビティ周りの酸素濃度分布を計測するための試験部を設計・製作し,一連の成果を国内会議で発表した.
また,②については,本研究にて構築した溶存気体輸送モデルを実装した流体解析ソルバーを用いて実験と同形状の翼形および二次元縮小拡大流路のRANS解析を実施し,溶存気体の析出効果により後流構造に明確に違いが現れることを明らかにした.後者については国内会議で公表し,前者については国内会議で発表予定である.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
津田 伸一 | 九州大学 | 工学研究院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
片山 雄介 | 九州大学 | 工学研究院 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)