流体の破壊力学―破壊の時間発展モデル構築と流動履歴依存性の検討
【研究キーワード】
粘弾性流体 / マグマ / 破壊 / レオロジー / 火山 / 降伏応力 / 懸濁流
【研究成果の概要】
爆発的な火山噴火ではマグマなどの複雑流体が急速な変形を受けて破砕し火山灰などが形成される.このような流体破壊の物理を解明することを目的とし,理論・実験・数値計算を組み合わせた研究を実施した.マグマを模擬するソフトマター物質としてひも状ミセル水溶液と市販の整髪ジェル水溶液を選出した.レオメーターによるレオロジー試験を行ったところ,ひも状ミセル水溶液はマクスウェル型の粘弾性を,ジェル水溶液は降伏応力と歪み速度弱化の特徴を示した.いずれもマグマ物性の特徴の一部を表している.これらの流体の中で気泡を急膨張させたり円柱を急速に動かしたときの流動と破壊を調べる実験装置を設計・製作した.そして,気泡や円柱周りの弾性歪み場を可視化する装置も組み立てた.一方,水蒸気噴火においてマグマ噴火とよく似た音波が形成されていることから,水蒸気噴火噴出物である火山泥もマグマと共通の破壊メカニズムを持つ可能性がある.そこで,天然の火山泥のレオロジー試験を実施したところ,ジェル水溶液とよく似た物性を示した.しかし,火山泥は固体粒子と低粘性流体からなる懸濁流体であり,そのレオロジーは計測方法によって見かけの物性が変化する可能性が指摘されている.球形粒子と液体からなる懸濁流に対し,変形中の粒子体積分率を制御した計測と粒子圧力を制御した計測を別々に行うことにより,懸濁流の見かけ粘性の歪み速度,固体粒子体積分率,粒子圧力などの間の普遍的な関係を得ることに成功した.理論と計算のパートでは,マクスウェル型粘弾性の様々な非線形構成方程式を整理し,適切と思われるものを選定した.そして,それを,有限要素法とフェーズフィールド法を組み合わせた粘弾性流体の破壊シミュレーションコードに実装した.オンラインによる研究会を複数回開催し,各国からの共同研究者(フランス・イスラエル・イギリス・チリ・日本)との議論を行った.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
大槻 道夫 | 大阪大学 | 基礎工学研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
亀田 正治 | 東京農工大学 | 工学(系)研究科(研究院) | 教授 | (Kakenデータベース) |
桑野 修 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 付加価値情報創生部門(数理科学・先端技術研究開発センター) | 研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】46,020千円 (直接経費: 35,400千円、間接経費: 10,620千円)