フルオロクロミズムを示す無機材料の開発と蛍光センシングシステムへの応用
【研究キーワード】
蛍光体 / 希土類元素 / フルオロクロミズム / 光物性 / 表面科学 / イメージング / 化学センサ / 蛍光センサ / 光学センサ / ナノ材料 / 多孔質材料 / 表面・界面物性
【研究成果の概要】
希土類元素を賦活した無機蛍光体材料におけるフルオロクロミズムの発現に関する研究を、前年度に引き続き、材料設計とプロセス構築の双方の立場から多角的に進めた。以下に詳細を述べる。
Y2WO6:Eu3+では薄膜型水素ガスセンサへの応用を目指し、前年度に成功した多孔質で蛍光強度の高い薄膜のゾル-ゲル合成を受けて、低温での水素ガス応答性の向上に向けて白金ナノ粒子触媒を担持する手法を考案した。その結果、150℃程度の温度で十分に応答性の高い蛍光薄膜を得ることができた。
MOFの熱分解により合成した多孔質なGd2O3:Eu3+粒子では、新たに水溶液中の銅イオンに応答して消光する現象を見出した。塩化銅、硝酸銅、硫酸銅水溶液を用いて比較検討した結果、いずれの場合も良好な応答性を示し、さらに消光の度合いが水溶液濃度にも依存する定量的な結果も得られた。また、銅イオンの存在状態について、多孔質粒子の細孔内にそれぞれの対アニオンとともに取り込まれていることが元素分析および分光法による解析で示唆された。
ペロブスカイト型のBaCeO3:Eu3+およびCaTiO3:Pr3+については、これらの酸化還元応答性を調べるために液相法を用いて微細構造を制御した試料を合成した。BaCeO3:Eu3+ではL(+)-アスコルビン酸水溶液で還元処理すると消光することがわかったが、その原因が酸による表面溶解である可能性が示唆されたため、今後は非酸性の還元剤を用いた検討を進めていく。CaTiO3:Pr3+では多孔質球状マイクロ粒子の合成を目指して、チタンアルコキシドの加水分解と水熱反応を組み合わせた新たな手法を採用した。結果として多孔質粒子の合成に成功したので、今後はその酸化還元応答性を詳細に調べていく予定である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)