極限環境耐性動物クマムシの持つ耐性メカニズムのダイナミズムと新規分子原理の解明
【研究キーワード】
乾燥耐性 / 相分離 / ゲル相転移 / ソフトマター / 弾性体 / クマムシ / 相転移 / ゲル
【研究成果の概要】
本研究課題では、これまでに同定してきた脱水ストレスに応答して可逆的に凝集するクマムシタンパク質群 DRYPs について解析することで、新たな耐性原理の検証と提唱を目指している。本年度は、まずストレス依存に動物細胞内で繊維構造を形成するクマムシ固有の CAHS タンパク質群について、線維化がもたらす物理特性の変化と生物学的影響を解析した。in vitro における微小液滴を用いた生物物理学的解析からCAHSタンパク質溶液は非ストレス時には完全に液体状態であるが、高塩環境下では顕著なヤング率の向上を検出し弾性体に変化することを明らかにした。さらに同CAHS遺伝子の安定発現昆虫細胞株を樹立したところ、高浸透圧ストレス下において細胞表面の弾性が有意に亢進するとともに、浸透圧による細胞体積減少が顕著に抑制されることを明らかにした。また、高浸透圧下における細胞の生存率も向上することを示した。これらの成果はCAHSタンパク質の線維化が細胞の物理特性に影響を与えるとともに生物学的なストレス耐性に寄与することを示している。ストレス耐性のメカニズムとして、CAHSタンパク質のようにストレス時にオンデマンドで線維化し細胞を物理的に強化するという新たな原理を提案するものである。また、CAHS 以外の DRYPs についてもストレス時における細胞内凝集形態を網羅的に解析し、様々な凝集パターンを示すものを同定した。なお、生物物理学的解析は東大・駒場の柳澤研・澤井研との共同研究として実施した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)