希ガスマトリックス効果を考慮した凝縮系振動スペクトルシミュレーションの理論開発
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
希ガスマトリックス / 希ガス化合物 / 分子シミュレーション / ab initio分子軌道法 / 白金カルボニル / 振動スペクトル / 倍音 / グラフェン / ab initio計算 / 凝縮系 / 分子動力学計算 / 調和振動数 / 基本振動数
【研究成果の概要】
本研究では、量子化学計算手法を凝縮系のダイナミクスに実装し、不安定分子種の分光定数を測定する手段として長らく利用されてきた「希ガスマトリックス単離法」を理論的にシミュレートする方法論を開発することを目的として研究を進めてきた。あわせて、希ガスマトリックス分光法で測定された実験データの中に希ガス化合物に帰すべきものが含まれていないか、高精度理論計算に基づき調べている。本年度は(1)キセノンとグラフェンの相互作用に関する高精度計算、(2)Ar-PtCO、Ar-PdCOの高精度分光定数予測、(3)希ガスマトリックス振動スペクトルシミュレーションプログラムの開発とキセノンマトリックス中に単離されたXe-BeOの振動スペクトルへの適用を行った。ここでは、すでに論文で報告を行った(2)について概要を述べる。モノカルボニル化合物PtCO,PdCOについてはArマトリックス中で測定された振動数が報告されているが、特に変角振動の振動数について、理論計算で得られる調和振動数と実験値との間に二倍ほどのずれがあった。他研究グループの論文では、何らかの理由で実験では倍音が測定されたのでは、と議論されていたが、その根拠についてはフェルミ共鳴の可能性が指摘されるのみで、解決には至っていなかった。本研究では、ArがPtCO,PdCOに10kcal/molのオーダーの結合エネルギーで付着し、変角モードの振動数が10%ほどブルーシフトすること、Arが結合する結果、基本振動数の振動子強度が極端に弱まり、他方倍音の強度が強まることを見出した。この結果は、Arマトリックス中ではPtCO,PdCOはそれぞれAr-PtCO,Ar-PdCOを形成していること、分光実験では基本音ではなく倍音が測定されたこと、を支持するものであり、新たな希ガス化合物を提案することができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
野呂 武司 | 北海道大学 | 大学院・理学研究院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
中山 哲 | 北海道大学 | 大学院・理学研究院 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2008 - 2009
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)