エネルギー技術の多元性と多義性を踏まえたガバナンス方法の研究
【研究分野】科学社会学・科学技術史
【研究キーワード】
再生可能エネルギー / ガバナンス / 環境社会学 / 環境倫理 / 持続可能性 / エネルギー技術 / 科学技術社会論 / 社会的受容性 / 環境正義 / 合意形成 / 環境倫理学
【研究成果の概要】
エネルギー技術と社会の関係が多様な主体の福利に適う条件を明らかにするための調査研究を進め、論文ならびに研究報告合わせて30報の成果を発表した。実証研究班、社会理論班、社会実験班の研究グループを構成し、それぞれ以下のような実績があった。
(1)実証研究班:波及的影響も含めた広義の利害関係を調査し、主体と価値の関係性をアクターネットワークとして図式化した。事例研究では社会的受容性にも注目した調査を実施し、多様な主体に便益が存在することや、将来世代への投資を伴うような配分が社会受容性に強く影響していることが明らかになった。また事業利益の配分という考え方以外に、地域活動を行う主体の財源として再生可能エネルギー事業に取り組むという手段としての再生可能エネルギー事業という考え方を示した。個別事例の調査に基づいてエネルギー事業が地域社会にもたらしうる正負のインパクトの総体を時空間別に明らかにした。(2)社会理論班:エネルギー技術と環境倫理についての既存研究をまとめながら、実証研究班の研究成果をマッピングするための理論的枠組みを構築した。社会紛争化しやすい要因の一つとして、認知的不正義の問題に注目し、問題が共有されないことに伴う問題について検討を進めた。また土地利用に伴う歴史的経緯など、環境史との関連も含めて扱うべき問題の所在も明らかになった。(3)社会実験班:風力発電の適地をあらかじめ地域で選定するゾーニングについてのアクションリサーチを前年度に引き続き実施し、多様な主体の利益に適う社会的制御の方法を試行した。ローカルナレッジを反映させる手法として市民調査を応用した量的手法や、熟議的手法を試行し、実際の政策形成過程に反映させた。こうしたガバナンスの手法がステークホルダからの信頼に寄与することも明らかになった。
【研究代表者】