フラットバンド構造を持った酸化物薄膜における電子相制御と機能性開拓
【研究キーワード】
酸化物 / 薄膜 / エレクトロニクス / スピントロニクス
【研究成果の概要】
本研究計画では、フラットバンドと呼ばれるエネルギー分散のないバンド構造を持った遷移金属酸化物を高品質薄膜化し、その電子相を制御することによって、フラットバンド構造において発現が予想されている種々の量子物性の観測とその機能化を目指している。
とりわけ遷移金属酸化物の中でも、パイロクロア型酸化物(A2B2O7、A = Sn, Pb; B = Nb, Ta)を対象とし、高品質薄膜作製および、化学置換によるキャリアドープを用いた電子相制御を試みている。本物質系は擬フラットバンド構造を持つことが理論的に予言されている他、p型透明導電体の候補物質でもあり、透明電極等への応用が期待されている系でもある。
前年度の研究では、ホールドープを目指してBサイトにTi、Hfを化学置換した薄膜の高品質化に成功した。一方で、ホールドープした薄膜でさえ、電気伝導性が著しく低く、電気輸送特性を通じてフラットバンド構造由来の量子物性の観測を行うことが困難であった。
そこで本年度は、光学バンドギャップがSn2Nb2O7、Sn2Ta2O7、Pb2Nb2O7、Pb2Ta2O7の4種類の化合物においてどのように推移していくかを検討した。第一原理計算によるバンド構造からは、AサイトをSnからPbに置換することで価電子帯がより平坦に、BサイトをNbからTaに置換することで伝導帯がより平坦になることが示唆されていた。このバンド構造から、直接遷移・間接遷移に対応する光学バンドギャップの差が、価電子帯の平坦さに対応することに着目し、光学測定の結果が理論の予想する傾向と合致することを確認した。また、各元素の軌道準位を考慮することで、本物質系のバンドギャップが説明できることを明らかにした。
以上は、本系におけるバンドエンジニアリングを目指すうえで大変意義深い
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)