ミトコンドリアを介した内皮細胞の血流メカノセンシング
【研究キーワード】
血管内皮細胞 / せん断応力 / ミトコンドリア / ATP / メカノバイオロジー
【研究成果の概要】
本年度は研究計画に沿い、以下の項目について新たな結果を得た。
1) ミトコンドリアにおけるATP濃度変化のリアルタイム計測:ミトコンドリアを標識するATP感受性の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブを用いてミトコンドリアATPの濃度変化のリアルタイム計測を行った。アデノウイルスベクターを用いて培養ヒト肺動脈内皮細胞(HPAECs)に遺伝子を導入し、HPAECsのミトコンドリアにATPプローブが発現することを、ミトコンドリアの特異的マーカーであるMitoTrackerと共局在することにより確認した。
2) 力学的刺激に伴うミトコンドリアATP産生機構の解析:ATPプローブを発現したHPAECsに流れ負荷装置で剪断応力を、伸展刺激装置や低浸透圧で伸展張力を加えた時のミトコンドリアATP濃度の変化を解析した。ATP濃度は剪断応力刺激で増大する一方、伸展張力刺激で減少した。電子伝達系の阻害剤(oligomycin, rotenone, CCCP)と解糖系の阻害剤(2-deoxyglucose, indoacetic acid, NaF)の効果を比較・検討したところ、剪断応力によるATP増大には、電子伝達系の働きが主である事が確認された。また、細胞内のプロトンの動態をpH指示薬SNARFで観察したところ、剪断応力により、細胞質内が酸性化することを見出した。更に、ミトコンドリア酸素活性を閉鎖系で測定可能な分析装置(Oxygraph-2k)で定量したところ、細胞膜コレステロールの多寡により酸素消費量が変化し、剪断応力依存的なミトコンドリアATP産生及び、細胞質内pH変化に重要な役割を果たすことが明らかになった。
以上の結果から、剪断応力により酸素消費量が増大すると同時に電子伝達系が活性化し、ミトコンドリア膜にプロトンの濃度勾配が発生することで、ATPが産生する分子機構の存在が示唆される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
安藤 譲二 | 獨協医科大学 | 医学部 | 特任教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)