中国四川省石窟摩崖造像群に関する記録手法の研究及びデジタルアーカイヴ構築
【研究分野】美術史
【研究キーワード】
石窟考古 / 四川 / 三次元デジタル計測 / 地域研究 / 仏教美術 / 美術史 / 中国 / 仏教 / 文化財 / 三次元計測 / 国際共同調査 / 四川省 / デジタルアーカイヴ / 三次元画像 / 飛仙閣石窟 / 国際研究者交流 / データベース / 文化財保護 / 考古 / 石窟寺院
【研究成果の概要】
これまでの3年間の四川省蒲江・〓峡地区での悉皆調査において取得した計23箇所の摩崖造像遺跡の資料の整理と、各仏龕の編年および歴史学的・美術史学的分析を行った。調査対象として記録を作成した仏龕・碑刻類の総計は600件以上を数える。それをもとに、摩崖造像の研究・保存活動の基盤となるデータベース(冊子とデジタルアーカイヴで公開の予定)のために、各龕の叙述の形式と用語の統一が必要であるため、本年度はその基準作りの試行を重ねた。特に、〓峡市における悉皆調査の結果得られた5箇所の摩崖遺跡には、西方浄土変相龕や千手観音変相龕などに代表される複雑な構成の龕が多いために、昨年度までの方式とは異なる工夫が必要になった。叙述と画像を有効にリンクさせるために「造像位置示意図」という概念図を提示したのはそのひとつである。
また、当該調査地区が位置する四川盆地西南部が、歴史地理上でいかなる性格の地域であったかを考察し、南隣の異民族王朝である南詔の入寇をしばしば受けた、中国世界と西南異民族世界との境界地域であったことの意味をさぐり、こうした立地が摩崖の造営や主題の選択に密接に関係したことを、とくに〓峡花置寺摩崖造像の碑文の分析から証した。
本研究の成果の一部を、8月8日から12日まで中国河南省洛陽市龍門石窟研究院において開催された、龍門石窟研究院主催の国際学会「龍門石窟研究院50周年記念龍門石窟国際学術研討会」において、研究代表者肥田路美が「四川地区的触地印如来坐像之造像情況-兼論摩崖造像的三維数碼撮影」の題目で発表し、とくに三次元デジタル計測の摩崖造像への利用について有益な意見や助言を受けるなど良好な反響を得た。
【研究代表者】