粒子法による原子炉過酷事故時の溶融炉心挙動の研究
【研究分野】原子力学
【研究キーワード】
粒子法 / MPS / シビアアクシデント / 溶融炉心 / MCCI / クラスト / デブリベッド / 蒸気爆発 / 液滴細粒化 / 圧力波 / エネルギー変換効率 / 液滴 / ブレークアップ / 表面張力 / シミュレーション / コリウム
【研究成果の概要】
粒子法を用いて溶融炉心-コンクリート相互作用(MCCI)の模擬実験であるSWISS-2とMACE-M0を解析した。どちらの場合も溶融物プール上面にクラストが形成され、上部水プールへの除熱が著しく阻害された。水プールへの除熱量やコンクリートの侵食速度は、どちらの模擬実験の場合も計算と実験でよく一致した。さらに、無限大体系で解析をおこなった。この場合も上面にクラストが形成されて伝熱が阻害された。ただし、コンクリート分解ガスの放出によってクラストが割れると、無限大体系では古いクラストが溶融物プールに沈み込むため、除熱量は大幅に向上することがわかった。
溶融炉心のデブリの形成を粒子法を用いて検討した。これは当初の研究計画をさらに発展させた課題である。具体的には、単一の溶融炉心液滴の水中での振舞いを解析した。蒸気膜の存在を無視すると、これまでの実験で得られている相変化がない場合の臨界ウェーバー数が再現できることを確認した。蒸気膜で液滴が覆われている場合は臨界ウェーバー数が大きくなり、液滴径が大きくなることが示された。この結果を用いてデブリベッドの限界熱流束を評価したところ約1MW/m^2となり、崩壊熱の除熱が十分可能であることがわかった。
水・蒸気・溶融物液滴、細粒化物の支配方程式を1次元有限体積法で離散化し、蒸気爆発の圧力波伝播を解析した。粒子法による過去の解析結果に基づいて、溶融物液滴の熱的細粒化モデルを作成し、相関式として組み込んだ。熱的細粒化が生じる場合には機械的エネルギー変換効率が5%程度まで達することがあるが、流体力学的細粒化では1%未満に収まることがわかった。大規模な蒸気爆発では流体力学的細粒化が支配的になり、1%程度の変換効率で評価できることが示された。
以上のように、当初の研究計画を十分達成しただけでなく、さらに発展した課題にも取り組み、成果を得ることができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
向原 民 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
越塚 誠一 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】14,100千円 (直接経費: 14,100千円)