電池法による高難度酸化反応の攻略
【研究分野】触媒・化学プロセス
【研究キーワード】
プロパン / アセトン / 活性酸素 / バナジウム / パラジウム / 燃料電池 / 酸化 / フェノール / 水素酸素電池 / 部分酸化 / ベンゼン / 酸素酸化
【研究成果の概要】
省資源・省エネルギーの立場から、これまであまり化学工業の原料として利用されていなかったベンゼンやプロパンなどの単純炭化水素の利用が注目されている。単純炭化水素は化学的に安定で、これを温和な条件で対応するアルコールやケトンなどに選択的に酸化する事は学術的にも大変興味ある事である。我々の研究グループは、ベンゼンやプロパンを直接部分酸化可能な新規酸化反応システムとして、水素・酸素電池反応を利用して陰極上で酸素を還元的に活性化し、炭化水素を部分酸化する方法を考察した。平成9、10年度には、常温常圧の極めて温和な条件下フェノールが選択的に生成すること見出し、また、ベンゼンよりも反応性に乏しい低級アルカンのプロパンの部分酸化を目標にカソードおよび反応システムの構築を試み、気相成長カーボンファイバー(VGCF)にパラジウム黒とバナジウムオキシ・アセチルアセトナート錯体(VO(acac)2)を添加するとプロパン部分酸化活性が発現することを見出した。
平成11年度は上記した[Pd-black+VO(acac)2]/VGCFカソードの最適な調製条件を検討した。その結果、VGCFにPd-black0.5mol%,VO(acac)21.0mol%添加したカソードが最もプロパン部分酸化活性が高く、酸化効率10%でアセントおよび酢酸が生成することが明らかとなった。さらにこのカソードを用いて、プロパン圧、酸素圧依存症などの速度論的検討を行い、最適反応条件を明らかにした。速度論的結果の中で、アセトン生成速度がプロパン圧に2次に依存したことは特に注目すべき結果である。
このカソード触媒の作用機構について検討を行った結果、a)VGCFは電子伝導体として機能し、b)パラジウム黒は酸素を2電子還元し過酸化水素種を生成すると同時にバナジウムを3価に還元する還元反応中心として機能し、c)バナジウムは3価に還元され、過酸化水素種(b)を活性化して活性酸素種を発生させてプロパンを部分酸化する、酸化反応中心として機能していることが解った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
志賀 昭信 | 住友化学工業(株) | 筑波研究所 | 研究理事 |
山中 一郎 | 東京工業大学 | 工学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】12,600千円 (直接経費: 12,600千円)