リン酸エステル構造をもつ高分子ゲルのイオン認識機能を利用した希土類元素の相互分離
【研究分野】反応・分離工学
【研究キーワード】
抽出 / 希土類元素 / 相互分離 / ゲル / 感温性ゲル / 相転移 / リン酸エステル / 温度スイング / リン酸ジエステル / アルキル基 / 立体障害 / イオン認識
【研究成果の概要】
リン酸エステル抽出剤を導入した感温性ゲルを合成し、硝酸塩を含む水溶液からの希土類元素の抽出分離を行った。リン酸エステルには末端にビニル基を有する2-metacrloxyethylacidphospate(MR)を用い、高分子構造体にはn-isopropylacrylamide(NIPA)及びAclyric acid(AA)を用いた。AA-MRゲルは温度に対して殆ど抽出能が変化しなかったが、NIPA-MRゲルは温度相転移を示し、33℃以上の収縮状態で希土類元素を抽出し、低温の膨潤状熊で溶離した。10〜40℃程度の温度スイングで抽出・溶離操作が可能である。また、NIPA-MRゲルの希土類元素の分離能は、高温での抽出剤固有の分離能と、低温でのゲルのコンフォメーション変化に伴う錯体の分解において生じる分離能よって決定された。
NIPA-MRゲルに対する希土類元素の抽出機構を調べたところ、ゲルの膨潤、収縮いずれにおいても抽出の化学量論式は単純なイオン交換反応式
Ln^<3+>+3RH【double arrow】LnR_3+3H^+
によって記述できた。抽出定数から算出したリン酸エステルの利用率は収縮状態で80%と高く、膨潤状熊で30%まで低下した。更に、温度スイング試験を行ったところ、膨潤状熊、収縮状態での希土類元素の分配比はスイング回数によって殆ど変化しなかった。NIPA-MRゲルを構成する高分子ネットワークのコンフォメーションは温度条件だけ決定され、膨潤・収縮を繰り返しても再現されることがわかった。このことは、リン酸エステルを導入した感温性ゲルによる新しい希土類元素の抽出プロセスの構築が可能であることを示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
高橋 俊夫 | ライオン(株) | 物質化学センター | 副主席研究員 |
中野 義夫 | 東京工業大学 | 大学院・総合理工学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,700千円 (直接経費: 2,700千円)