非弾性トンネル分光法によるナノシリコンのフォノン特性解析
【研究分野】電子・電気材料工学
【研究キーワード】
フォノン / トンネル分光 / ナノ構造 / シリコン
【研究成果の概要】
ナノ構造半導体中では,ナノサイズへの閉じ込め効果によって,電子だけでなく,フォノンも特性が大きく変調される可能性がある。これまで,フォノンへの閉じ込め効果は理論的には指摘されているものの,実験的には殆ど調べられていなかった。本研究課題では,ナノ半導体中におけるフォノンのエネルギー,特に電子と強く相互作用するフォノンのエネルギーが,ナノ半導体のサイズ縮小で受ける影響を明らかにすることを目的とする。具体的には,独自の極薄膜シリコンMOS構造を作製し,ナノ薄膜シリコンへ電子をトンネル注入し,そのトンネル電流の2次微分特性を解析することにより,電子-格子相互作用に関与するフォノンのエネルギーを調べる。本年度は,トンネル酸化膜を有するMOS容量の作製と非弾性トンネル分光法の測定系立ち上げを行った。トンネル電流を観測するためには,低抵抗のシリコン基板上に厚さ2nm程度のシリコン酸化膜を形成する必要がある。ところが,低抵抗シリコン基板の酸化速度は,一般的なシリコン基板の酸化速度に比べて圧倒的に速く,通常の酸化条件で酸化を行うと,瞬時に5nm程度のシリコン酸化膜が形成されてしまうという問題があった。今回,酸化温度を700℃程度まで下げ,酸化膜形成後のアニール処理などを実施することで,厚さ2nm程度のトンネル酸化膜を形成することに成功した。また,ロックインアンプやナノボルトメータを活用することで,低ノイズのコンダクタンスを微小電圧領域で取得する測定系を構築することに成功した。これらの基礎技術の構築により,次年度以降でナノ構造シリコンにおけるフォノン特性解析を実施する道筋をつけることができた。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的萌芽研究
【研究期間】2010 - 2011
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 300千円)