濡れワイヤ塔による気-液間熱・物質移動操作
【研究分野】熱工学
【研究キーワード】
ガス吸収 / ガス分離 / 物質移動 / 伝熱 / 環境保全 / エネルギー利用 / 二酸化炭素問題
【研究成果の概要】
本研究は,研究代表者らが"数珠状液滴列"(string-of-beads flow)と呼ぶワイヤ上の特異な液流様式を利用し,高い体積基準熱・物質伝達率,高い液体側の移軸効率(transfer efficiency),低いガス側圧力損失を併せ持つ新しい形式の気-液接触装置開発の可能性を探ることを目的としたものである.本研究全体は,それぞれ目標を限定したいくつかの個別研究から成る.それらの実施内容と得られた成果は以下の通りである.
1.CO_2/N_2混合ガスの流路中に懸垂された単一のワイヤ上を流下するMEA(モノエタノールアミン)水溶液の数珠状液滴列へのCO_2吸収について,パラメトリックな実験を行うと共に,二酸化炭素とMEAの化学反応を考慮した解析モデルを構築した.
2.均等に配列された109本のワィヤに沿ってMEA水溶液を流下させる濡れワイヤ塔のプロトタイプを試作し,CO_2/N_2混合ガスからのCO_2吸収に関する実験を実施した.濡れワイヤ塔のガス吸収性能は充填塔のそれにほぼ匹敵し,一方,ガス流の圧力損失は1/100のオーダーまで低減させ得ることが確認された.
3.各ワイヤ上を流下する吸収液の温度を制御する仕組みを考案した.この温度制御機能を付加した濡れワイヤ塔(ワイヤ109本内蔵)を試作し,上記構想の実現性を確認した.さらに140℃程度までのCO_2/N_2混合ガスを使用できる濡れワイヤ塔を製作し,これを用いた実験によって,ガス温度によっては吸収液の温度制御が吸収性能向上に寄与し得ることを確認した.
4.温度制御機能を持つ回流式風洞に109本のワイヤ束を組み込んだ気-液熱交換実験装置を製作した.ワイヤ上にはシリコン油を熱回収媒体として流下させて,加熱空気流からシリコン油への伝熱特性を調べ,産業廃ガスからの熱回収のような熱的操作への濡れワイヤ塔の適用性を確認した.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
梶 信藤 | 職業能力開発総合大学校 | 産業機械工学科 | 教授 |
小川 邦康 | 慶應義塾大学 | 理工学部 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】11,800千円 (直接経費: 11,800千円)