直接観察に基づいた変形双晶の原子論的メカニズムの解明
【研究キーワード】
双晶 / その場観察 / TEM/STEM / 機械試験
【研究成果の概要】
今年度の主な成果は以下の通りである。
(1)サファイヤにおける菱面双晶の原子挙動解析:サファイヤ(α-Al2O3)単結晶における{1-102}<-1101>菱面双晶に関して、前年度までに行った第一原理分子動力学法による原子挙動シミュレーションを精査し、双晶の素過程に対応する5つの原子の協調的な運動(シャッフリング)の軌跡を得た。始状態から終状態に至る変位は<-1101>方向もしくは<1-210>方向への単一方向に生じており、幾何学的に予測される変位とほぼ同等であった。しかし、シャッフリング時には各原子は3次元的に運動しており、エネルギー的に安定となるような相対位置を取りながら進行していることが示唆された。双晶メカニズムの解明には、今後この原子挙動に関わるパスとエネルギーの関係を明らかにすることが重要であると考えられる。
(2) fcc金属における{111}双晶の原子レベルその場観察実験:MEMS荷重負荷デバイスならびに走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いたその場観察実験により、fcc金属の変形挙動を原子分解能にて観察できることが明らかとなった。シュミット因子を考慮して試料方位を調整することにより部分転位対の運動による{111}すべりもしくは先頭部分転位(leading partial dislocation)の運動による{111}双晶の2つの変形モードをある程度制御することが可能となった。{111}双晶の観察においては、先頭部分転位のlayer-by-layerの運動による成長過程や母相-双晶界面上の部分的な回復現象が認められた。本実験事実に基づいて詳細なメカニズムの検討を進めている。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)