大きな電気物性異方性をもつビスマス層状構造化合物の設計と開発
【研究分野】無機工業化学・無機材料工学
【研究キーワード】
ビスマス層状構造化合物 / 単結晶 / 強誘電体 / 異方性 / 誘電率 / 導電率 / 結晶配向性 / 半導性 / 誘電性 / フラックス法
【研究成果の概要】
ビスマス層状構造化合物は、ビスマス層と擬ペロブスカイトブロックが積層された結晶構造を持つ。本研究は、この化合物を用いて、方向により誘電性、導電性などの電気物性が大きく異なる材料を設計、開発することを目的としている。平成5年度はチタン酸ビスマス(Bi_4Ti_3O_<12>)、チタン酸バリウムビスマス(BaBi_4Ti_4O_<15>)の単結晶を作製し、それらの電気的異方性を調べ、その異方性を生じさせるビスマス層の本質的特性を明かとした。1.チタン酸ビスマス:フラックス法により作製した単結晶で誘電性、導電性を測定した結果、室温から720℃の温度範囲で、ビスマス層に平行なa(b)軸方向の方がビスマス層に垂直なc軸方向より誘電率、導電率ともに大きく、誘電率で10倍(676℃;キュリー温度)、導電率で約10^3倍(150℃)という異方性が示された。また、無配向多結晶体では、誘電率、導電率ともに単結晶の両方向での値の中間の値を示すことを確認した。2.チタン酸バリウムビスマス:溶融徐冷法により作製した単結晶について測定した結果、チタン酸ビスマスと同様、a(b)軸方向の方がc軸方向より誘電率、導電率ともに大きく、誘電率で58倍(420℃;キュリー温度)、導電率で約10倍(150℃)という異方性が示された。このチタン酸バリウムビスマスの単結晶の電気的異方性は、本研究で初めて明かとなったものである。3.ビスマス層の役割:ビスマス層と擬ペロブスカイトブロックの存在比率の異なる上記2種の異方性、及び、交流インピーダンスによりそれぞれの部分の電気容量を分離して求めた結果より、ビスマス層は、誘電率の小さな常誘電体の性質を持ち、さらに、導電キャリアーに対し電位障壁として作用する絶縁層の性質を持っていることが明かとなった。これらの成果は、層状構造化合物の物性制御および異方性を積極的に利用した機能素子の設計を行う上で極めて有用であり、重要な意義を持つものである。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中村 吉伸 | 東京大学 | 工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1992 - 1993
【配分額】5,400千円 (直接経費: 5,400千円)