単結晶薄膜化により物性を制御した強相関系遷移金属酸化物の電子構造の研究
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
遷移金属酸化物 / 超薄膜 / パルスレーザー堆積法 / 光電子分光 / 強磁性 / 強相関 / ナノ構造 / パルス堆積法 / 磁気円二色性
【研究成果の概要】
・原子レベルで成長を制御したLa_<1-X>Sr_xFeO_<3,La_<1-X>Sr_XMnO_3単結晶薄膜を作製しin-situで角度分解光電子分光を行うことにより,世界に先駆けてこれらの3次元ペロブスカイト酸化物のバンド構造・フェルミ面の決定した.
・バンド幅制御系Ca_<1-X>Sr_XRuO_3単結晶薄膜を作製し,in-situで軟X線光電子分光により,コヒーレント部分・インコヒーレント部分間のスペクトル強度の移動を明らかにした.膜厚を制御したSrRuO_3薄膜の電子状態を測定し,SrRuO_3極薄膜においては4〜5ML以下で絶縁体,5ML以上で強磁性金属相が安定化することを見出した.
・常磁性金属CaRuO_3と反強磁性体CaMnO_3の混晶CaMn_<1-X>RuxO_3(CMRO)で強磁性が誘起される現象を理解するため,CMRO薄膜試料に対して光電子分光と軟X線磁気円二色性(XMCD)の測定を行ったMnとRuのスピン磁気モーメントが反並行であることを見出した.
・LaAlO_3基板上に作製したPr_<1-X>Ca_XMnO_3単結晶薄膜にっいてin-situ光電子分光を行い,基板圧力により電荷整列の抑制された状態の電子状態を明らかにした.
・共鳴光電子法を用いることによりLa_<0.6>Sr_<0.4>FeO_3/La_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3及びSrTiO_3/La_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3ヘテロ界面の電子状態を観測することに成功した.La_<0.6>Sr_<0.4>FeO_3/La_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3においてMnからFeへの電荷移動が生じているのに対して,SrTiO_3/La_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3ではMnからTiへの電荷移動は生じないどいう現象を見出した.
・SrTiO_3と銅酸化物高温超伝導体YBa_2Cu_3O_7,との界面における内殻準位のエネルギーが,紫外線照射によるキャリアー注入でシフトすることを確認した.シフトの励起光周波数依存性から,光注入されたキャリアーの寿命を明らかにした.
・モット絶縁体LaTiO_3とバンド絶縁体SrTiO_3の界面に金属状態が出現することを,光電子分光により見出した.同じくモット絶縁体であるVO_2(低温相)とバンド絶縁体であるTiO_2の界面は金属相が出現せず,界面における極性の不連続がキャリアードーピングの原動力であることが示唆された.
・酸化物p-n接合ZnO/NlO界面の静電ポテンシャル分布を,Arイオンスパッタと内殻光電子分光を組み合わせて求めることに成功した.
・光電子顕微鏡(PEEM)を用いたLa_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3薄膜の磁区観測を行い,La_<0.6>Sr_<0.4>MnO_3薄膜においてはステップ誘起の180度磁区ドメインが生じることを見出した.
【研究代表者】