ナノプローブ電子顕微鏡による構造相転移の微視的パターン形成の研究
【研究分野】結晶学
【研究キーワード】
電子顕微鏡 / 構造相転移 / パターン形成 / 整合不整合相転移 / ディスコメンシュレーション
【研究成果の概要】
本研究は、ナノプローブ機能を持つ透過型電子顕微鏡を用いて相転移における微視的パターンの構造的および物性的性質を明らかにし、パターンの時間発展の動的性質について調べることを目的とする。大別して以下のような3つの面で成果が得られた。
1.整合不整合相転移におけるパターン形成
Rb_2ZnCl_4およびBaZnGeO_4の整合不整合相転移についてディスコメンシュレーション(DC)の作るパターンの時間発展の特徴を調べた。パターンの解析には(1)実空間の像を扱う方法と(2)逆空間での回折強度から調べる方法とを考え、2つの物質に適用した。この手法にはテレビカメラによる動的観察と画像処理機能を持つイメージングプレートシステムの使用が大きく寄与した。ディスコメンシュレーションの密度を変える機構として、stripple、antistrippleの生成と消滅およびそれらが移動するときの特徴が電顕による直接観察から明らかにされた。DCの画像のフーリエ変換操作によりDC間の自己相関関数が求まりパターン変化を特徴づける量として適していることが分かった。また、DCの配列のモデルから計算機シミュレーションにより得た散漫散乱分布を実験と比較することで、DC間の配列および相互作用についての情報が得られた。
2.種々の相転移における新たな発見
本研究で新たな相転移現象の性質が初めて発見され、あるいは確認されたのも本研究の重要な成果である。BaZnGeO_4では、電子線照射によって相転移が起こることを見いだし、新たに3つの相の存在を確認した。Pb_3(PO_4)_2では、従来から問題とされてきた強弾性相転移点の高温側の散漫散乱の原因が低温相の微小分域の発生によることを高分解能像から確認した。Ba_2NaNb_5O_<15>の整合不整合相転移では、低温側の準不整合相の強弾性分域が微小なサイズで形成され相転移のときに急激なサイズ変化を伴うこと、メモリー効果に微小な強弾性分域が関与することを見いだした。
3.微視的領域の物性測定法
電子顕微鏡観察および収束電子回折は微視的パターンの構造的情報を与えるが、さらに、ナノプローブ機能を利用して微小領域の物性を測定する方法についての研究も行った。これには既存のカソードルミネッセンス検出装置を利用してチイレンコフ放射および遷移放射を検出し、放射スペクトルと特定の波長の光の発光分布を調べることで誘電率の変化が検出できる可能性のあることが分かった。
【研究代表者】