惑星的な課題とローカルな変革:人新世における持続可能性、科学技術、社会運動の研究
【研究キーワード】
人新世 / 気候変動 / 社会運動 / インフラストラクチャー / 人類学 / 持続可能性 / 科学技術
【研究成果の概要】
2021年度は、引き続き新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、フィールド調査の実施に一定の制限がかかる状況が続いた。2020年度より状況は好転し、緊急事態宣言が発令されていない時期に断続的に調査を実施したものの、事前に感染拡大の予測を立てることは困難であり、パンデミック以前の研究体制に完全に復帰することはできなかった。そのため、今年度も継続して、フィールド調査に代わる代替的な調査を実施した。デジタル・メソッドを用いたオンライン上のデータ収集と分析に関しては昨年度以上に大幅な進展が見られた。また、草の根の持続可能性運動の調査では、これらの運動がしばしば強調するDIY活動にオンラインを通して参加するDIYエスノグラフィという手法を用いた。これはこうしたDIY活動にオンラインから参加し、自らもDIYを行う経験をすることで調査を行う方法で、対面でのフィールド調査を補う一定の成果をあげた。これらの調査方法は、現場の主要な関心事を把握するというフィールド調査の初期段階で、特に効果的であることが明らかになった。また、フィクションと社会調査を融合する実験的なプロジェクトも実施した。
一方、昨年度に引き続き、理論的な検討も行った。Latour、Chakrabartyらの人新世に関する議論の理解を深めるとともに、これらの思想の潮流と持続可能性に関する他の研究潮流、特に開発批判、脱成長論などとの関係性を検討した。その結果として、これらの議論が共通して、惑星規模の持続不可能性や資本主義の矛盾という問題と、共同生活や社会制度を介して人々と環境、動植物、地球物理学的プロセスの間のに形成される感覚的・情動的な関係という、スケールが異なる二つの問題の関係に焦点を当てていることが明らかになった。また、昨年度考察したスピノザ主義的な人類学理論は後者の理解に資するものであることが明らかになった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2025-03-31
【配分額】44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)