石造文化財の劣化機構と保存対策の研究
【研究分野】建築構造・材料
【研究キーワード】
石造文化財 / レンガ建造物 / 塩類風化 / 不飽和透水係数 / TDR含水率測定装置 / 有限要素法 / 水分分布
【研究成果の概要】
1)石造、レンガ建造物の劣化にかかわる材料物性で特に重要な水分特性曲線、不飽和透水係数を測定する装置の作成を行った。本測定装置を用いて、タイのレンガ、漆喰の水分特性曲線、不飽和透水係数の値を求めた。漆喰は、レンガに比べて同じマトリックポテンシャルにおいて、体積含水率が大きく、いわゆる保水性が大きいことが分かった。また、これに対応して乾燥状態において、漆喰の方が、レンガより不飽和透水係数が大きいことが分かった。水分特性曲線、不飽和透水係数などの物性値を用いて、タイ、アユタヤのレンガ造建造物内の年間を通した水分量の変化、水分移動速度などを有限要素法による解析ブログラムを用いて解析した。
2)タイの遺跡周辺の土の粒度分布を、レーザー回折粒度分布測定装置を用いて測定した。土の粒度分布は土の水分特性を求める上で重要なパラメータである粒度分布から、水分特性曲線、不飽和透水係数などの値を、米国塩類研究所で作成したデータベースを用いて予測することができた。
3)サーモTDRセンサーを開発し、土の含水率、電気伝導度、熱伝導率の同時測定手法に関する提案を行った。このセンサーを用い、石造、レンガ造建造物、土壁等のの熱物性、水分特性の測定の測定を試みその有用性を検証した。
4)日本壁の水分分布、水分移動を明らかにするために、モデル土壁を作成し実験を行った。モデル土壁中には、小型TDR水分センサーを設置し、土壁作成時、作成後の土壁中の水分測定を行った。また、モデル土壁中の水分分布、水分移動に関するシミュレーション研究を行った。気象データとしては、現在モデル実験を行っている札幌開拓の村での温度、湿度、放射収支等を用いた。シミュレーションの結果は実測結果と良く対応した。文化財の劣化には材料中の水分量、水分移動等が大きな影響を与えており、水分状態を非破壊で測定、評価する上で有効であることが分かった。
【研究代表者】