土地利用調整型まちづくり条例の開発協議過程の実態分析等を通じた実効性の評価
【研究分野】都市計画・建築計画
【研究キーワード】
まちづくり条例 / 土地利用コントロール / 土地利用計画 / 開発コントロール / 地区計画 / 土地利用調整 / 開発協議 / 都市計画
【研究成果の概要】
本研究では、「土地利用調整型まちづくり条例」として、真鶴町、穂高町、掛川市、神戸市、篠山市、湯布院町の6事例を取り上げ、これに既成市街地地区改善型街づくり条例の典型として世田谷区の事例を比較参照事例として加え、条例適用対象外小規模開発の実態を含む開発実態調査と、7自治体条例運用担当者の事例比較研究会を通じて、「土地利用調整型まちづくり条例」の実効性と制度設計・運用上の課題を分析し、以下の知見を得ることができた。
1.土地利用調整型まちづくり条例において、開発の基準が明確に定められている場合、基準不適合開発の事前排除効果が大きく、届出・協議・勧告の仕組みであっても、制度移行期の特殊事例や既存不適格用途の増改築等を除けば、基準は、ほとんど遵守されていること。ただし、既成市街地型の世田谷区の場合、計画・基準が、「まちづくり計画」と「法定地区計画」との二重構造になっていることから、「まちづくり計画」の基準が行政・事業者双方において誘導基準と見なされ遵守されない事例も生じていること
2.小規模開発が条例手続き対象とならない「裾切り」による「条例のがれ」現象が、共同住宅開発や店舗開発において目立ち、これらと小規模開発のコントロールが共通した課題となりつつあること
3.事前確定的な基準によらない開発協議(穂高町のΔ用途の地元協議、真鶴町の「美の基準」の運用等)の場合、住民・事業者間の協議、あるいは行政担当者・事業者間の協議、といった第三者的専門家や一般市民の関与のない二者協議では、開発の個別的特性に応じた協議過程となりにくく、画一的硬直的運用に陥りやすいこと
4.地区まちづくり計画の策定や、その前提となる協議会の結成は、住民の自発的活動を期待するだけでは、地区が公共事業対象地域や問題開発発生地域に限定されやすく、計画策定地区を拡げるためには行政側からの積極的な働きかけが必要であること。
【研究代表者】