リアルタイムで達成動機の変化を捉える―帰属理論による発話分析手法の開発
【研究キーワード】
発話分析 / 帰属理論 / 福祉デバイス開発 / 高齢社会 / 機械学習
【研究成果の概要】
虚弱な高齢者のQoL向上や介護者の負担低減の観点から、福祉デバイス開発への期待は高まる一方、高齢者への負担の大きさから、複数回ユーザーテストを実施するのが難しい。限られた機会から効率的に知見を引き出す方法が求められる。本研究では、これまで十分に活用されてこなかったユーザーテスト中の発話データに着目し、認知心理学の帰属理論を基盤とした発話分析法を開発し、リアルタイムにユーザーの達成動機の変化を推定することを目指す。これまで、帰属理論をリアルタイムな発話分析に応用する理論の構築に注力した。具体的には、高齢者による福祉デバイスのユーザーテストをケースとし、その
際に取得した全ての発話データを帰属理論に基づく4つのカテゴリ(能力、努力、タスクの難しさ、運)に分類した。その分類の時間的遷移を追跡することで、ユーザーにとって特徴的な場面を簡便に抽出できる可能性を示した。特に、カテゴリが変化する場面を抽出することが、ユーザーの特徴的な体験を抽出することにつながることが示唆された。このように、膨大な発話データから特徴的な体験のみ抽出することが可能になれば、それをデバイス開発者側へ簡便にフィードバックできるようになり、短期間での福祉デバイス改善につながるだろう。以上のように、これまでに提案手法の福祉デバイス開発への応用可能性を示した。
一方、COVID-19の拡大により、介護施設への立ち入りおよび実験実施・データ取得が困難となった。そのため、これまでの成果を土台とし、COVID-19という制約下においても、本研究を発展させるために、実験可能な文脈に落とし込む必要がある。そこで本年度は、原因帰属理論自体は元来、教育場面で発展してきた理論であることを踏まえ、研究を学術的に発展させるべく、また、確かなニーズがある領域で本研究成果を活かすべく、応用先を教育工学分野へ変更するべく、検討を実施した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)