局部火災加熱される構造部材の加熱分布予測と部材温度応答計算法
【研究分野】建築構造・材料
【研究キーワード】
局部火災 / 金属構造 / 入射熱 / 温度上昇 / 数値流体力学 / 有限要素法 / 耐火設計 / 発熱速度 / 耐火構造 / 火炎 / 渦崩壊モデル / 火災
【研究成果の概要】
(1)独立火炎に近接する柱の局部火災加熱効果の明確化
近傍の火炎に曝露される柱の加熱・温度応答を模型実験で測定し、定常一様加熱を仮定した場合の理論表面温度と比較して、柱が一表面で火炎に曝露される場合は定常一様加熱の50-90%に表面温度上昇が緩和されること、また、この効果は火源・柱間に僅かでも間隔があると顕著になることを明らかにし、局部火災加熱の概念に基づく火災安全設計の有効性と計画指針を示した。なお、柱が火炎に囲まれる場合についても同様の実験を行ったが、この場合は火災加熱の局部性に基づく温度上昇の緩和は期待できないことを示した。
(2)局部火災加熱を受ける柱・梁の加熱性状のモデル化
模型規模の鉄骨柱試験体により、火炎に正対する柱表面の入射熱分布が、火源の無次元発熱量、火源・柱間の無次元距離で整理できることを明らかにし、これらを入力して入射熱分布を求められるように図表化した。梁については、研究代表者らが過去に同様の図表化を行っているが、これも模型規模の実験によっていたため、本課題では、柱・梁とも、実大規模の試験体による実験を実施し、模型規模で明らかにした加熱性状が実大規模にも適用できることを示した。また、梁については、数値流体力学により、入射熱分布を誤差30%程度以内で予測できることを示した。
(3)局部火災加熱を受けた時の部材の温度応答予測計算法の確立
(2)で誘導した部材の入射熱を境界条件として、有限要素法により柱の温度分布を予測する手法を開発した。入射熱は、測定値と熱収支モデル上の定義の間に系統的な差異があるため、ここでは標準状態で数値計算と実測値を比較して表面熱伝達率をチューニングする方法を提案し、他の実験条件でも計算値と測定値が良く一致することを示した。なお、梁については、研究代表者らが過去に、より簡便な材軸方向のみを考慮した1次元の差分法でも良い精度で温度を予測できることを示していたが、本課題では、柱では入射熱・表面温度の分布がより顕著になるため、部材表面の二次元的分布を無視できないことを示した。
以上により、金属構造について、局部火災加熱の概念が有効に働く条件を明らかにし、火源発熱速度を入力条件として、角柱・H型梁の温度分布を計算で予測することを可能にした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
若松 高志 | 株式会社熊谷組 | 技術研究所 | 係長研究員 |
鍵屋 浩司 | 国土交通省国土技術政策総合研究所 | 研究員 |
高口 洋人 | 早稲田大学 | 理工学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】13,800千円 (直接経費: 13,800千円)