沿道住居の高遮音化に関する研究
【研究分野】建築環境・設備
【研究キーワード】
沿道住居 / 遮音性能 / 道路交通騒音 / 縮尺模型実験 / 数値解析 / 実測調査 / 遮音測定法 / 二重皮膜構造
【研究成果の概要】
都市生活の利便性は道路交通に大きく依存しているが、その反面、道路開発・モータリゼーションの進展によって居住域の音環境条件は悪化の一途を辿っている。この問題を解決するためには、自動車の発生騒音対策、低騒音舗装の開発道路構造の改良など道路側の対策とともに、沿道住居等の建物の外部騒音に対する防御性能を向上させる必要がある。本研究では、沿道の音環境を改善する手法を体系的に探り、将来の沿道住居のあり方を音響工学の立場から提案することを目的として、以下の検討を行った。
1.沿道騒音に対するバルコニー空間吸音処理の効果 沿道建物に対する交通騒音を低減させる方法としてファサード形状の工夫およびファサード各部位の吸音処理が考えられるが、これらの問題に対する系統的な検討はこれまで行われていない。そこで、沿道建物に良く見られるバルコニー空間を吸音処理する対策方法に着目し、その効果を数値計算、模型実験および現場実測によって検討した。数値解析および模型実験の結果、吸音部位として最も効果的なのはバルコニー軒天井部分の吸音であり、この対策によってバルコニー空間およびバルコニー窓面を通して室内に入射する騒音レベルを5dB以上低減させることが可能であり、その効果は高層階ほど大きくなることを見出した。さらに、鉄道沿線に立地する集合住宅において、バルコニー軒天井吸音の効果を現場実測によって調べ、その効果を確認した。
2.二重窓の遮音性能向上に関する実験的検討 遮音性能を高めるために適用されることの多い二重窓は、中・高音域では高い遮音性能を有するものの、低周波数域では共鳴透過によって一重窓よりも遮音性能が低下する欠点がある。この遮音欠損を改善するために、低周波数域の吸音に効果的な共鳴器型吸音構造(ヘルムホルツレゾネータ)を二重窓に組み合わせて用いる方法について実験的検討を行った。実物の二重窓を想定した1/5縮尺模型実験によって共鳴器型吸音構造の適用による遮音性能の改善効果を調べたところ、低域共鳴透過周波数において透過損失が7dB程度向上する結果が得られ、二重窓の遮音性能向上の可能性が見出せた。
3.建物ファサードの遮音性能の測定方法に関する実験的検討 現実の道路沿道建物では暗騒音の影響によってS/N比が低下し、建物の遮音性能が高くなるほどその性能を精度良く測定することが困難となる。本研究により提案された対策方法の効果を実際の建物を対象として調べるためには、低いS/N環境下でも高精度な結果を得ることができる測定方法を整備しておくことが不可欠である。そのような測定法として、同期積分法、スイープパルス法、M系列変調相関法等に着目し、それらの測定精度について実験室実験および現場実測による比較検討を行った。
【研究代表者】