波長別光環境を考慮した建築内植物の生育評価手法に関する研究
【研究キーワード】
屋内緑化 / バイオフィリックデザイン / シミュレーション / グロースチャンバー / 被験者実験 / 分光放射照度
【研究成果の概要】
本研究では、波長別光環境を考慮した建築内の植物の生育評価手法を提案することを目的としており、令和3年度は主に以下の3課題に取り組んだ。
1) オフィス内の環境を模擬した植物栽培箱(グロースチャンバー)で、国内外で多く用いられる3種類(Pachira aquatica, Rhaphidophora tetrasperma, Epipremnum aureum)の植物を生育させる実験を2021年6月に完了した。環境条件の異なる3つのグロースチャンバーで観葉植物を実際に生育させ、生長量の差や光合成能を解析した。約500lxで1日9時間照射する日積算受光量が最低の条件でも、3種の供試植物は191日間の実験期間中の生育を維持した。一方で、白色LEDの光量の差(500 lxと1500 lx)と露光時間の違いにより、乾物重から算出した生長速度や、葉内の葉緑素量の指標であるSPAD値、光飽和点などで条件間の有意差が得られた。したがって、屋内緑化のための詳細な照明設計は植物の成長を管理する上で、有効なものであると考えられた。
2) 令和2年度に実施した波長別光環境シミュレーション『ALFA』の精度の検証実験について執筆した論文の英文翻訳版を公開した(DOI: https://doi.org/10.1002/2475-8876.12246)。分光放射照度の実測値や計算値から算出した光合成有効光量子束密度により、植物の光飽和点や光補償点などの知見を利用して建築内の光環境を評価する手法を示した。本研究で検討した手法は、照明による屋内植物への効率的な補光量の検討や、昼光を有効に活用した屋内植物の配置の検討などに活用可能であると考えられた。
3) 植物などを設置した座席で、創造性とワーキングメモリを要求する2種類のタスクを行わせた際の被験者の眼球運動を計測し、植物による認知機能の改善効果との関係を考察する実験を行った。タスクの休憩中に植物を見る際の眼球運動の特徴として、固視の少なさ、瞬目の多さ、視点の分散の多さなどが確認された。現在は研究成果をとりまとめている。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)