量子効果を積極利用した薄膜SOI MOSFETの性能向上とばらつき低減の研究
【研究分野】電子デバイス・機器工学
【研究キーワード】
SOI / MOSFET / 量子効果 / 特性ばらつき / 有限要素法 / しきい値電圧 / 量子閉じ込め / スケーリング / 薄膜SOI / 反転層容量 / 二次元閉じこめ / 完全空乏型SOI
【研究成果の概要】
概要
本研究の目的は,MOSFETをスケーリングしたときに発生する諸問題を,量子効果を積極的に利用して回避し,さらに特性向上とばらつき低減を達成することである.極めて細いチャネルをもつMOSFETを実際に作製して,量子効果によるしきい値電圧の上昇を室温において評価するとともに,シミュレーションとの比較により,この現象を詳細に評価した.実験では,量子力学的効果を顕著にするため,膜厚方向だけでなく,横方向にも電子を閉じこめるため,極めてチャネル幅の狭いMOSFETを電子ビームリソグラフィとドライエッチング法を用いて作製した.チャネル幅は2nm程度から100nm程度まで変化させた.チャネル幅は極めて均一であり,そのばらつきは2nm以下である.チャネルの結晶方位を変えるとともに,NMOSのみならずPMOSデバイスも試作し,量子効果の面方位依存性とキャリア依存性を調べた.測定の結果,NMOS,PMOSとも,チャネル幅が10nm以下になると急激にしきい値電圧が上昇することがわかった.これらの実験事実を説明するため,有限要素法を用いて2次元シュレディンガー方程式を解き,チャネル中の電子および正孔の基底状態を計算したところ,しきい値電圧の上昇は量子閉じこめ効果による基底準位の上昇が原因であることが明らかとなった.以上により,線幅が10nm以下の極微細MOSFETでは,室温においても量子効果が特性に直接影響を及ぼすことが明らかとなった.この現象を,われわれは量子力学的狭チャネル効果と呼ぶことにした.また,この効果を積極的に利用することでしきい値電圧等の制御が行うことが可能である.その方法と可能性について検討を行った.
【研究代表者】