量子論コンピューティクスによるパワー半導体界面形成機構と電子物性の解明
【研究キーワード】
コンピューティクス / 密度汎関数理論 / 機械学習 / デバイス界面 / エピタキシャル成長 / 原子反応
【研究成果の概要】
本年度における、パワー半導体表面界面系に対する計算で得られた成果としては、(1) GaNデバイスのゲート絶縁膜として、シリカとアルミナの混合アモルファス酸化物 AlSiO = (SiO2)x(Al2O3)1-x がデバイス特性を改善することの提唱、(2) GaN中のらせん転位はアクセプター原子Mgと結合し、漏れ電流の起源となることの解明、(3) GaNのステップフローモードのエピタキシャル成長機構解明、があげられる。
(1)については、第一原理MD法に基づく熔融クエンチ法によりアモルファスAlSiOを作成し、そこでの酸素空孔の構造と電子準位を明らかにした。その結果、Alに囲まれた酸素空孔の生成エネルギーは高く、Siに囲まれた酸素空孔ができやすいこと、Siに囲まれた酸素空孔はGaNのギャップ中に電子準位を引き起こさないこと、がわかった。これにより、AlSiO絶縁膜は絶縁破壊に対する耐性が高いことが示唆される。
(2)については、らせん転位芯の原子構造を初めて明らかにし、さらに、その転位芯はMg原子をひきつけることがわかった。この転位芯とMgの複合体形成により、アクセプター準位が価電子帯に埋没し、一方、転位芯起因の準位が伝導帯近くに上昇し、ドナー的振る舞いをすることがわかった。これはpn接合中のらせん転位は、p型領域のMgをひきつけ、その領域をn型に変化させてしまうこと、したがって逆バイアス下での漏れ電流を引き起こすこと、を示している。
(3)については、Gaリッチな成長表面でのステップ構造を網羅的に探索し、それらの原子構造とステップ生成エネルギーを計算した。さらにテラス上でのアンモニアの分解によって生じたNHユニットがテラス上を0.6 eVの拡散障壁を超えてステップ端に到達し、Ga 原子とともに、水素原子の脱離を促し、ステップフロー成長が起こることが示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
洗平 昌晃 | 名古屋大学 | 未来材料・システム研究所 | 助教 | (Kakenデータベース) |
松下 雄一郎 | 東京工業大学 | 物質・情報卓越教育院 | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2018-04-01 - 2022-03-31
【配分額】42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)