位相共役光の時間反転伝搬を用いた新たな生体内部機能局所計測技術の開発
【研究キーワード】
時間反転 / 位相共役 / 光伝搬 / 光散乱 / 無侵襲計測 / 分光計測 / 生体計測 / 拡散
【研究成果の概要】
本研究は、位相共役波による時間反転という新原理を散乱分光の分野に新たに導入することにより、これまで実現が困難であった強い散乱体内部における局所領域分光計測技術の開発を目的とする。第二年度の研究実績は次のとおりである。
1.初年度の理論解析の結果をもとに、着想を具現化するための計測方法、計測条件、計測範囲等につき解析をさらに進め、それらを特定した。具体的には、生体のような濃厚系散乱体内部の光伝搬につき、次のように詳しい解析を行った。(1)均一散乱体に対しては、光エネルギーの輸送方程式に基づき、拡散近似解を適用して解析を行った。理論モデルに対し、実験において必要とされる入射光量、最適な変調周波数、検出感度、計測系のSN比、計測可能深さ等の特定を行った。 (2)血管や筋肉層など不均一な対象に検討を進め、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、同様の解析および実験条件の特定を行った。
2.初年度に独自に考案したイノベーション、つまり超音波変調周波数を時間に対し掃引するチャープ方式を追求した。具体的には、 (1) 初年度の原理解析をさらに進め、チャープ方式を組み込んだシステムの働きを、シミュレーションできるようにした。その結果、(2)生体組織のような濃厚系散乱体内部において、光計測領域を局所化する性能の大きな向上が確認された。
3.体内血管のモデルを構築し、位相共役波による時間反転イメージングを試みた。超音波変調の部分に対し、従来法と新規チャープ方式を適用し比較したところ、散乱による劣化のない画像との相関係数が、新手法により倍増することが確認された。つまり、チャープ方式による有意な空間分解能の向上が確かめられた。
4.これらの成果を国際会議や国内学会で発表した。2021年4月には米国光学会(OSA)講演、5月および9月には国際会議での基調講演を行った。
【研究代表者】