セラミックスの界面電子機能の解析と制御
【研究分野】無機工業化学・無機材料工学
【研究キーワード】
光伝導 / 酸化亜鉛 / 界面電子機能 / 微小電極
【研究成果の概要】
セラミックス電子材料の多くはその機能が、粒界、表面あるいは異物質との界面で生じている。それらの電気的機能の機構解析や制御を行うためには、複雑な微細構造や多様な界面が含まれるマクロな状態では厳密さに欠けるため、単位界面での物性を直接測定することが重要である。本研究では、光伝導特性を有することが知られている酸化亜鉛(ZnO)多結晶体を対象とし、購入した設備備品である三次元マイクロマニピュレータを用いて、未だ明らかにされていない粒界の光伝導特性に及ぼす影響を検討した。ZnOでは、リチウム(Li)を固溶させたもので光伝導性が大きいことが報告されている。また、Li固溶によりZnOの粒成長が促進されることも知られている。そこでLi濃度、焼成温度、焼成時間を変化させ、ち密で粒子径の大きな(20μm以上)焼結体を作製した。その試料表面にアルミニウムを蒸着した固定電極を設け、タングステン細針の微小電極をマニピュレータで移動させ、一粒子上および一粒界をはさんだ二粒子間での暗中および光照射下での電気抵抗(それぞれRd、Ri)を測定した。その結果、Li濃度2at%、900℃20時間焼成の試料(最大粒径25μm)において、光伝導特性(Rd/Ri)は粒内で1.07、粒界をはさんだもので1.21の値が得られ、粒界部での光伝導特性が粒内よりも大きいことが確認された。また、Li濃度0.3at%、900℃2時間焼成の試料では、粒子径が1μm以下のために粒内での光伝導特性は測定てきなかったが、粒界部では1.86の大きな光伝導特性が観測された。これより、ZnO焼結体では、粒界部での特性が支配的となる超微粒子多結晶体において単結晶よりも極めて大きな光伝導特性が期待される。粒界部での光伝導機構などはまだ明らかでないが、本研究の成果によりセラミックス電子材料の機能解析が進展し、新たな光機能材料やそのデバイスの開発などへの展開が期待できる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中村 吉伸 | 東京大学 | 先端科学技術研究センター | 助手 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1988
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)