超高真空環境下で発現する有機半導体のintrinsic物性の解明
【研究分野】機能・物性・材料
【研究キーワード】
有機半導体 / トランジスター / キャリア移動度 / 超高真空 / 格子散乱 / キャリア注入 / ホッピング / トンネル / 電界効果トランジスター / 移動度 / BTQBT / 分子ワイヤー / キャリア輸送機構 / 極低温 / 有機電界効果トランジスター / キャリア濃度 / intrinsic物性 / 有機トランジスター
【研究成果の概要】
超高真空環境中で有機半導体薄膜トランジスター(OFET)を作製し、半導体特性を「その場」測定し、キャリアの輸送機構、注入機構を調べた。チタニルフタロシアニン薄膜のキャリア移動度を測定したところ、超高真空中ではn型特性を示し、その移動度は9×10^<-6>cm^2V^<-1>s^<-1>であった。電気伝導度およびキャリア濃度は、9×10^<-8>Scm^<-1>および6×10^<16>cm^<-3>と計算された。このn型特性は酸素の導入により消失し、正孔が多数キャリアとなってp型特性が現れる。正孔のキャリア移動度は、電子のそれとほぼ同じで1×10^<-5>cm^2V^<-1>s^<-1>であった。p型、n型の発現は、残留ガスの微妙なバランスによって決まり、ある条件下では、キャリアが補償しあい、電気伝導度が小さくなるとともに、p型、n型の特性が同時に現れた。また、BTQBT(Bis-(1,2,5-thiadiazolo)-p-quinobis(1,3-dithiole)を活性層として用いた場合、超高真空中では、正孔移動度0.1cm^2V^<-1>s^<-1>の大きな値を示した。成膜条件により集合体構造が異なり、基板温度が100℃前後では、針状結晶が粗に成長し、電極間隔が5μmの場合、多くの結晶が電極を橋渡しする。それぞれの結晶は、分子が長軸方向にスタックしていることが電子線回折の結果から予測された。極低温領域まで、移動度の温度特性を調べたところ、30K以下ではトンネル過程、30〜150Kでは、ホッピング過程、150K以上では格子散乱過程がキャリア輸送機構に重要な役割を果たしていることがわかった。
【研究代表者】