遺伝子ベクターとしてのブロック共重合体とDNAとの複合体形成の物理化学的特性解析
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
高分子ミセル / 遺伝子デリバリー / ブロック共重合体 / ナノカプセル / DNA / 生体適合性 / ポリエチレングリコール
【研究成果の概要】
本研究は、遺伝子ベクターとして設計されたブロック共重合体であるポリエチレングリコールーポリリシン(PEG-PLL)とプラスミドDNA(pDNA)の複合体形成に関する特性解析を目的とする。初年度に、AFMによる高次構造解析、滴定型等温熱分析装置(ITC)によるPEG-PLLのpDNAへの結合挙動解析の予備検討を行った。本年度はITCによる予備検討結果を詳細に解析するために、single set of identical sites modelを組み合わせた新規フィッティング法の開発を継続した。
低分子凝縮剤によるDNA凝縮と、PEG-PLLによるDNA凝縮では類似の滴定曲線が得られ、いずれも2成分に分離可能である。各々の熱力学的パラメータを導出する際に、既知のtwo-site bindingモデルによるフィッティングを行うと、第1結合過程と第2結合過程のカチオン種の結合では必ず前者が強いという条件下で解析が行われるが、本研究で開発したフィッティング法ではこの条件に制約されることなく結合挙動を解析できる点が優れている。カチオン性高分子によるDNA凝縮では、重合度の減少と塩濃度の増加に伴いカチオンのDNAへの結合力が減少し、結合に伴うエンタルピー変化は小さく、自由エネルギーとエントロピーの変化は同程度で大きいことから、自由エネルギー減少に伴って本来系の外に発熱するはずの熱が系の内部でのエントロピー増加に用いられることが明らかとなった。DNAの構造変化のみに対応する熱力学変数を、DNA凝縮を伴う結合過程における熱力学変数から凝縮を伴わない初期の結合過程における変数の差によって表されることを示し、この結果からもエントロピー効果に関して同様の結論を得た。PEG-PLLとPLLホモポリマーの比較の結果、後者で顕著な二次凝集による熱量変化に関する知見を得ることも出来た。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(A)
【研究期間】2004 - 2005
【配分額】11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)