前駆体の精密設計に基づく二次元窒化炭素構造体の薄膜形成と光応答型膜反応器への応用
【研究キーワード】
二次元窒化炭素 / ナノ材料 / 光エネルギー変換 / エネルギー変換
【研究成果の概要】
まず、様々な窒素含有量を有するレドックス活性な二次元窒化炭素構造体を開発することを目的として、原料モノマーとして、拡張π共役系有機分子ユニットを導入した窒素リッチな新規前駆体の合成検討を行った。今年度は、アザアセンを主骨格とし、レドックス中心として芳香族アミンを組み込んだ形の前駆体分子系の開発を実施した。なかでもテトラアザペンタセンを平面π共役ユニットとし、複数の芳香族アミンを置換した形の新規含窒素π共役分子系の合成に成功した。これら開発分子系は一般的な有機溶剤に可溶であり、レドックス反応に伴い発生した電荷/スピンが分子全体に非局在化することが判明し、前駆体分子系として様々なプロセスでレドックス活性な二次元窒化炭素構造体を作製可能な分子系となり得ることが明らかになった。
一方で、メラミンを前駆体として、管状炉を用いた熱化学気相成長(熱CVD)法による二次元窒化炭素の薄膜形成を実施した結果、昨年度よりも更に重合度が増大し、かつ結晶性に優れたg-C3N4の薄膜試料を得るに至った。また、g-C3N4ナノ粒子で修飾した酸化チタンナノチューブアレイ試料に対して、水酸基ラジカル検出や気相系での光触媒水素生成検出を実施し、可視光照射下での光誘起電荷の分離機構としてZ-スキームが作用していることを見出した。
さらに、3-アミノ-1,2,4-トリアゾールを前駆体として、窒素がより多く含まれたg-C3N5の粉末試料を新たに作製した。その結果、バンドギャップエネルギーが2.1 eVまで低減することを確認し、窒素組成の変更によるバンドギャップ制御の有効性を示した。また、g-C3N4と比較して層状成長が生じやすいことや、構造規定剤としてアルカリハライドを活用することで短冊状の試料が形成できる等、二次元窒化炭素のナノシート化においても、g-C3N5が有望であることを示す結果が得られた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
伊藤 彰浩 | 三重大学 | 工学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)