紫外励起による超高温での構造のその場観察用新型ラマン散乱システムの開発
【研究分野】無機材料・物性
【研究キーワード】
ラマン散乱 / 紫外光 / 熱輻射 / 高温その場観察 / ジルコニア / ハフニア / ペロブスカイト / (1)ラマン散乱 / (2)紫外光 / (3)熱幅射 / (4)高温その場観察 / (5)ジルコニア / (6)ハフニア / (7)ペロブスカイト / 紫外 / ラマン分光 / 構造 / 相転移 / その場観察
【研究成果の概要】
セラミックス材料の特性、物性、組織の制御にとって、その構造を高温でその場観察することは非常に重要である。セラミックスの分野では、通常相の同定にX線回折を使うので、高温でのX線回折実験は珍しいことではない。しかしながら、X線回折はセラミックスのように酸素の位置が物性や相変化に重要な役割を果たす系においては必ずしも十分ではなく、また結晶子径の小さい試料には有効でないなどの問題点があり、高温での研究を可能にする補完技術が必要である。本研究では、これを実現するために紫外光を用いたラマン散乱システムを開発した。通常のラマン散乱では、励起光に汎用性の高いアルゴンガスレーザーを用いる。最もよく使われる励起光は、488nmの青色ラインまたは515nmの緑色のラインである。しかしながら、これらの可視光を励起光に用いた場合のラマン散乱では、熱輻射の影響が大きい高温での測定や強い蛍光を発する物質系での測定が困難であった。この問題を解決するために、363nmの紫外線領域の光をラマン散乱の励起光として用い、とくに1500℃以上の高温での測定を可能にする新しい紫外ラマン分光装置を設計し、その有効性を初めて明らかにした。本システムを用いて、様々な高温材料(ハフニア、ジルコニア、ペロブスカイト)の高温での相変化の観測に成功した。例えば、可視光488nmと紫外光363nm励起を用いた場合のジルコニア(ZrO_2)のラマンスペクトルの温度依存性を比較したところ、488nm励起では900℃付近から熱輻射の影響が現れ、1200℃では測定そのものが不可能になったのに対して、363nm励起では熱輻射の影響はほとんどなく、1100℃と1200℃の間での単斜・正方相転移を明確に観測でき、1600℃という高温での測定も可能であった。
【研究代表者】