制御における動的な溶媒効果の理論的解明
【研究分野】遷移状態制御
【研究キーワード】
反応動力学 / 化学物理 / 溶媒効果 / エネルギー移動 / クラスター / 反応性境界 / 相空間構造 / 機械学習 / 化学反応動力学 / 反応境界
【研究成果の概要】
本研究では,遷移状態の知見に基づいて化学反応を制御することを目的とし,特に反応分子に対する周辺の分子(「溶媒」など)の影響に注目して理論的研究を遂行している。対象として,HCN→CNHの異性化反応をとりあげ,周囲にAr原子を1個置いた系を考察している。前年度までの解析では,Ar+HCN系のシミュレーションを行うための電子状態計算とポテンシャルエネルギー面の作成とそれを用いた反応ダイナミクスの解析を行うとともに,遷移状態付近の相空間構造に着目し,相空間内の反応分断面(遷移状態)や反応性境界を求めた。また,前年度から機械学習を用いた解析にも着手した。
この反応において重要な因子が何かを解明するために,Ar,H,C,N各原子の初期座標と速度をインプットとして用い,反応の結果を機械学習によってどこまで予測できるかを調べた。機械学習の手法は前年度のk近傍法およびサポートベクターマシンから,より詳細な分子論的解釈を得ることを期待してランダムフォレストに変更した。ランダムフォレストによる学習結果についてpermutation importaceおよびSHAPを計算して各変数の重要度を調べた。その結果,第一義的にはH原子のCN軸に平行な方向の速度が反応の成否に効いているものの,Ar原子が近くに存在するとH原子のCN軸と垂直な方向の速度が影響をもつことが見出された。このAr原子の効果をより詳細に理解するために,ランダムフォレストにおける各変数の寄与の大きさを評価するSHAPという量を任意の2変数に対してプロットする解析手法を開発し,Ar原子の位置による反応への影響の違いを明らかにした。その結果,Ar原子のCN軸方向の位置によってH原子の速度の影響のしかたが逆になることなどが見出された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山下 雄史 | 東京大学 | 先端科学技術研究センター | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2016-07-19 - 2023-03-31
【配分額】9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)