新規エネルギー変換型光触媒による水分解のダイナミクス
【研究分野】機能・物性・材料
【研究キーワード】
レーザー分光 / K4Nb6O17 / 励起寿命 / スピンコート薄膜 / 単結晶 / 色素 / 過渡吸収スペクトル / 電荷移動 / K_4Nb_6O_<17> / 層状化合物 / インターカレーション / 発光寿命 / 光励起 / 緩和過程 / 光触媒 / ソフトケミカル / 層状金属酸化物 / 層剥離 / ラマン分光法 / レーザー分光法
【研究成果の概要】
フェムト秒時間分解吸収分光により、層状ニオブ化合物K4Nb6O17薄膜試料および同薄膜にルテニウム錯体をインターカレートした試料の励起状態緩和過程を初めて調べた。K4Nb6O17薄膜は紫外光照射下で水の分解反応を示し、ルテニウム錯体インターカレート試料は可視光照射下で水素発生反応を示す。これらの系における反応初期過程に関する知見を時間分解測定から得ることを目的とした。
薄膜試料は湿式粉砕-スピンコート法により得た。測定装置は再生増幅器付きフェムト秒チタンサファイアレーザーを光源としたシステムで、励起光にレーザーの第2及び第3高調波を用いる。フェムト秒白色光をプローブパルスとし過渡吸収スペクトルを測定する。測定波長領域は430-750nm、時間分解能は250fs、観測時間領域は励起後1nsまでである。
K4Nb6O17薄膜試料のバンドギャップを励起した場合、可視域全体に広がる非常にブロードな吸収バンドが観測された。他の金属酸化物の場合との比較からトラップされた電荷の吸収と帰属した。過渡吸光度は励起直後は数10psの時定数で減衰し、また寿命ナノ秒以上の長寿命成分が観測された。励起光強度依存性の実験から、比較的自由に動くことのできる電子とホールの再結合が起きていることが分かった。
層間にあるルテニウム錯体Ru(bpy)32+を波長400nmで励起した場合、Ru(bpy)32+の吸収のブリーチが観測された。その時間変化の解析から、Ru(bpy)32+からK4Nb6O17へ電荷注入がピコ秒の時間で起こり、その電子はK4Nb6O17内を拡散しながらサブナノ秒の時間においてRu(bpy)32+と再結合しているということが示唆された。
以上のように光触媒作用を持つ層状化合物における光触媒反応初期過程を高時間分解能で追跡することに成功した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
野村 淳子 | 東京工業大学 | 資源化学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
和田 昭英 | 東京工業大学 | 資源化学研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】1998 - 2000
【配分額】36,400千円 (直接経費: 36,400千円)