新規高分子電解質を用いた電気自動車用メタノール直接型燃料電池システムの開発
【研究分野】反応・分離工学
【研究キーワード】
プラズマグラフト重合 / 電解質膜 / 燃料電池 / メタノール / DMFC / 電気自動車
【研究成果の概要】
最も移動用電源として期待されているメタノール直接型固体高分子燃料電池では、燃料が液体である、改質器が不要なため頻雑な起動・停止にも耐えうる、負荷変動応答性も大幅に改善できる、触媒被毒が問題とならないなどの利点がある。しかし、以下の問題点も指摘されている。メタノール自身が固体高分子膜を透過し直接酸化されてしまう点、メタノールのアノードでの酸化反応活性が低い点である。酸化活性については作動温度を150℃以上にすることで、改善されることも報告されている。これらの問題点を克服できれば、電気自動車用電源として実用化が一気に進む可能性が高い。
本研究ではメタノール直接型燃料電池用の新規高分子電解質を開発し、電気自動車用電源としての新しい燃料電池システムとしての性能を評価・実証することを目的とする。具体的にはプラズマグラフト重合法を用い、細孔充填型の新しい固体電解質を開発し、燃料電池システムを作成する。一般にポリマーは高温で軟化するが、熱分解する温度まではその性能を維持する。そこで耐熱性基材の細孔中にポリマーを化学結合させて埋め込めば、高温下でも基材骨格が膜の構造を維持し充填ポリマーの性能を発揮できるはずである。
耐熱性の高い多孔性テフロン基材にアクリル酸およびビニルスルホン酸ナトリウムを重合し電解質膜を合成した。作成した膜は指針通りに基材細孔中にグラフト鎖が形成しており、細孔充填型電解質膜となっていた。スルホン酸など強酸基を導入するためには塩を重合系に入れることにより荷電反発を抑制する必要があった。プラズマ照射条件を制御することにより、膜厚方向に均一なグラフト重合相分布を実現した。作製された膜は比較的高いプロトン伝導性を示すことも確認した。最後に、アクリル酸を重合した膜は、常温でもナフィオンよりも高いメタノール透過阻止性能を示しただけでなく、180℃の高温まで安定したメタノール透過阻止性能を示した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山口 猛央 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】14,100千円 (直接経費: 14,100千円)