未培養原生生物1細胞ゲノム解析系の確立とシロアリ腸内木質分解性原生生物の機能解明
【研究キーワード】
共生 / メタゲノミクス / 1細胞ゲノミクス / 腸内微生物 / 1細胞トランスクリプトミクス / 原生生物 / 難培養 / ゲノム / 未培養 / 昆虫
【研究成果の概要】
本研究課題の目的は、未培養原生生物(単細胞真核生物)の1細胞ゲノム解析手法の確立である。環境中には多様な原生生物が生息するが、未培養種も多く、それらの生理・生態は未知である。本研究ではシロアリ腸内原生生物群集を材料とするが、それらはシロアリの餌である木材の分解発酵の主要部分を担うと考えられているものの、純粋培養成功例は無く、詳細な機能は不明である。ゲノム解析を行うにしても、原生生物細胞ごとに系統が異なる可能性が高いため、単一細胞からのゲノムと(ゲノム解析補助のための)網羅的転写産物を同時に解析する必要がある。その技術的困難により、原生生物1細胞からの高完成度な新規ゲノム解読例は無く、1細胞転写産物解析も容易ではない。
2020年度(2021年度繰越含む)には、シロアリ原生生物種1細胞を物理的に単離し、同一細胞からの核DNAの全ゲノム増幅と細胞質中mRNAの逆転写及びcDNAのPCR増幅を行い、ゲノム配列再構築と遺伝子領域同定を行った。総塩基長は約150 Mb(推定完成度7割)、遺伝子数約2.8万で、100以上の糖質分解酵素遺伝子を含んでいた。これまで未知であったアミノ酸やビタミン類の合成経路なども判明しつつある。現段階で高品質の配列が取得できているが、予想した以上に異種生物の非特異的な核酸混入が見られ、その識別方法が大きな課題である。
また、原生生物には細胞内・表面に特定の細菌種が共生することが多い。これらは非特異的DNA混入とは異なり、必ず混入するものなので、あらかじめそれらのゲノム配列を取得しておくことが望ましい。そこで、同原生生物種の核を除いた部分から全ゲノム増幅を行い、まず細菌16S rRNA配列に基づく群集構造解析を行った。その結果12種類の共生細菌配列を取得した。この情報は、今後のゲノム配列解析の基盤となる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山田 明徳 | 長崎大学 | 水産・環境科学総合研究科(水産) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
瀬川 高弘 | 山梨大学 | 大学院総合研究部 | 特任助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)