軸不斉ビアントリルを利用したキラル空間の構築とその応用
【研究分野】有機化学
【研究キーワード】
ビアントリル / キラル軸 / キラル空間 / 円二色性 / 絶対立体化学 / 回転異性体 / アセチレン / X線解析 / 円二色性スペクトル / 超分子化学 / 分子認識 / 軸不斉 / 包接 / X線構造解析
【研究成果の概要】
9,9'-ビアントリルおよびそれに関連した構造を用いて,軸不斉を持つ芳香族化合物を設計し,分子の光学的性質,結晶中のキラル空間の特徴および立体異性化に伴うダイナミクスについて研究した.
1.キラル9,9'-ビアントリルジカルボン酸誘導体
2,2'および3,3'位にカルボキシル基をもつ酸誘導体について,ジアステレオマーに誘導する方法でエナンチオマーを分割し,X線構造解析によって絶対立体化学を決定した.さらに,円二色性(CD)スペクトルを理論計算により解析し,TDDFT法が実測スペクトルを良好に再現することが明らかにされた.2,2'ジカルボン酸のメチルエステルを用いて包接化を試みたところ,光学活性体は種々のゲストを包接したが,ラセミ体はベンゼンを包接しただけであった.また,対応するフェニルエステルは全く包接能を示さなかった.この性質の違いをX線構造から議論した.
2.9,9'-ビトリプチシルの光学活性回転異性体
メソ酒石酸の立体化学的なモデルとして標題の構造を用いて,光学不活性と光学活性な回転異性体を単離した.この研究を通して「絶対配座」の用語の意義を再認識させた.
3.アセチレンの束縛回転
アセチレンの両端に9-アントリル基,9-トリプチシル基または1-ナフチル基をもつ化合物を合成して,アセチレン軸回転の束縛を試みた.立体的に嵩高い置換基を導入することにより,NMRで観測可能な程度に回転が遅くなり,最も高い障壁はジ(9-トリプチシル)エチンの系で観測された77kJ/molである.回転障壁に及ぼす基本骨格の構造や置換基の効果を,X線構造および速度論的データをもとに調べた.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
戸田 芙三夫 | 岡山理科大学 | 理学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)