アルキンタギングによる脳の病態生理学解明の新たなツールの開発と応用
【研究キーワード】
アルキンタグ / 脳 / プローブ / 生理活性物質
【研究成果の概要】
脳細胞間の情報伝達は化学情報伝達物質のやり取りにより行われるが、これらの多くは分子量が数百から千程度の低分子量生理活性物質である。これらは、それ自体の分子量が500以上あるような蛍光色素による標識とその蛍光観察が適用できず、脳内での動態とその病態における変化などが謎に包まれてきた。そこで本研究では、脳の病態生理学に迫るため、これらの低分子量生理活性物質をアルキンにより標識して可視化解析することを試みている。研究2年目の本年度は、これまでに開発に成功したアルキンタグ・ドーパミンの生理学的な解析を進め論文発表すると共に、この手法を更に一般化させるため、新たな標的分子への応用を進めた。
まず、アルキンタグ・ドーパミンにおいては、それが内在性のドーパミンと化学的・生物学的に非常に類似したものであり、ドーパミンを模倣する新しいプローブであることを明らかにした。そしてこれを用いることで、ドーパミンの神経細胞内への取込みにおける、生理活性や温度への依存性を明らかにすることに成功し、これらの結果を取りまとめたものを論文発表した。また、ドーパミンの生理・病態生理学に関わる研究者らがこのプローブを自由に使って研究を進められるよう、国内外における市販化を実現した。
次に、低分子量生理活性物質の解析のための基盤技術としてアルキンタギング法を展開するべく、更なる応用を進めた。このため、ペプチド性生理活性物質に着目し、ペプチドへのアルキンタグの導入法を検討し、簡便な手法の開発に成功した。本年度は特に、母子、或いは社会一般における社会的結びつきという高次の精神機能とそれに関与する疾患において非常に重要な役割を果たすオキシトシンに着目した。オキシトシンへのアルキンタギングに成功し、その脳内での挙動についての解析を進めた。ここから、オキシトシンの脳組織内における特異的な結合部位などが明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)