ペロブスカイト型酸化物における骨格構成Bサイトイオン空孔の存在可能性
【研究分野】無機材料・物性
【研究キーワード】
ペロブスカイト型 / 自己拡散係数 / 科学拡散係数 / 熱膨張率 / 固体酸化物燃焼電池 / 酸素電極 / 金属空孔拡散 / 酸素不定化性 / 化学拡散係数 / 固体酸化物燃料電池 / 酸素不定比性 / クロム酸ランタン / マンガン酸ランタン / 拡散 / 酸素過剰 / 金属不足 / ペロブスカイト型酸化物 / Bサイト / 空孔
【研究成果の概要】
一般式ABO_3で表されるペロブスカイト型酸化物は、酸素空孔が生じやすく金属空孔は生じにくい.中でも,Bイオンは酸素を介して互いに密に結ばれて結晶構造の骨格を形成するため、Bサイト欠陥は極めて僅かであると考えられている.LaMnO_3系ペロブスカイト型酸化物は酸素雰囲気で金属不足の不定比組成を示し,どの様な欠陥生成によりその組成が実現するのか注目されている.中性子回折やX線回折では欠陥の存在がAサイトのみなのかA, B両サイトなのか未だ確定できず、金属不足の不定比組成が金属空孔と格子間酸素の何れに因るのかも実験的には証明されていない.本研究ではこれらの解明を主題とし,3年の期間で次のような研究を進めた.
1.周囲の酸素圧を1000℃で0.0001気圧と1気圧の間で変化させたときLaMnO_3緻密焼結体の体積の変化をディラトメータでその場計測した.長さ15mm厚さ0.5mmの試料が10日間かけて長さ方向に約10--20μm程度,酸化によって膨張し,還元によって縮む高温X線回折で求めた結晶格子長はこれと逆の変化をする.この対比からで,金属不足組成が金属イオン欠陥の生成によることが初めて実験的に証明された.
2.イオンの拡散は空格子点を介して進むので,拡散定数測定によるAサイトとBサイトの空孔量比較を試みた.放射性同位体に利用には困難を伴うので,微量不純物の拡散測定を行った.まず,酸素欠陥が支配的なYCrO_3にLa(AサイトYを置換)とMn(BサイトCrを置換)を拡散させたところ,両者の拡散係数と,その酸素分圧依存がほぼ同じになり,A, B両サイトに同量の欠陥が生じるという予想外な結果が出た.金属不足組成のLaMnO_3の不純物拡散ではBサイトの拡散係数がAサイトより数桁小さいこととが明らかになり,その値が初めて測定された.すなわち,LaMnO_3の酸素過剰域ではAサイト空孔の生成が優先する.
【研究代表者】