第一原理バンド計算に基づく無機結晶の誘電・弾性物性の計算手法の確立と特性の評価
【研究分野】無機材料・物性
【研究キーワード】
第一原理バンド計算 / 全エネルギー計算 / 結晶構造 / 圧電特性 / 誘電率 / Frozen phonon近似 / 電気機械結合係数 / 短縮Gauss基底
【研究成果の概要】
本研究では、格子定数と原理配置を変化させながら第一原理バンド計算による全エネルギー計算を行い、結晶の物性を計算する手法を確立することを目的とした。圧電体であるAIN,ZnOについて、TOフォノンモードおよび誘電率、圧電定数、電気機械結合係数の計算を行った。
計算には、結晶の第一原理計算で全エネルギーを正確に計算できるCrystal88^<1)>を用いた。陽イオンを陰イオンに対してz軸方向に変位させ、分極状態を作り、各状態についての全エネルギーを計算した。イオン変位に伴うエネルギー変化から、Frozen phonon近似を用いてTOフォノンモードの振動数を計算することができ、また、Szigeti式^<2)>によって定歪み条件での比誘電率ε^e_<33>を計算することが出来る。イオン変位に伴う結晶格子の歪みを考慮することで、定応力条件における誘電率ε^x_<33>、電気機械結合係数k_<33>と圧電定数d_<31>を計算できる
最後に計算結果を示す。結晶構造の計算結果は省略したが、第一原理法でウルツ鉱型の結晶構造を1%以内の誤差で精度良く計算できることが確かめられた。また、表1のように、誘電率は実測値とよい一致を示していることが分かる。また、圧電定数や電気機械結合係数も34%以内の誤差で計算できることも確認された。
しかしながら、ZnOでの誤差の原因の一部は分極関数の欠落による基底関数の精度が不十分なことに起因すると考えられた。また、有効電荷の精度が誘電率・圧電特性の計算結果に大きく影響を与えるため、有効電荷の評価精度を上げることが必要であることが明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1995
【配分額】1,100千円 (直接経費: 1,100千円)