ワイドギャップ半導体MOS界面欠陥の正体の横断的解明
【研究キーワード】
MOS界面欠陥 / 電子スピン共鳴分光 / 電流検出 / ワイドギャップ半導体 / 電流検出型電子スピン共鳴 / スピン欠陥 / MOS界面 / 4H-SiC / MOSFET / ダイヤモンド / BVセンター / 炭化ケイ素 / 窒化ガリウム / 第一原理計算 / PbCセンター / 炭素ダングリングボンド / 電子スピン共鳴 / IV族系半導体 / GaN
【研究成果の概要】
本研究の最大の武器は「電流検出型電子スピン共鳴(EDMR)分光」である。この分光実験は、外部磁場とマイクロ波で電子スピンを励起し、その励起を試料電流で検出する。2021年度は、この特徴を生かしたスピン検出実験を行った。
対象は、炭化ケイ素(4H-SiC)のMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)に埋め込んだ「シリコン空孔スピン(Tv2a型)」である。このスピンは4H-SiCで最も有望なスピン欠陥/量子ビットとして知られているが、EDMRによる検出例がない。EDMRは電流励起・電流検出のため、EDMRによってスピン欠陥/量子ビットの検出ができればMOSFET型・量子デバイスの集積小型化が見込めてインパクトがある。検出に使用したのは、産業技術総合研究所(研究分担者)で作り込まれたnチャネル窒化Si面4H-SiC MOSFET(ゲート長5um、幅200um)である。そのMOS界面直下にプロトン照射(エネルギー80kV、照射量1e13cm-2、量子科学技術研究開発機構QSTで実施)でシリコン空孔を埋め込んだ。この状態でチャネルに電流を流してEDMRを測ったところ、約1e5個のシリコン空孔スピン(Tv2a型)を検出することができた。検出感度は十分とは言えないが、Tv2a型スピンがEDMR検出できることを初めて実証した実験として評価された。
2021年度のEDMR実験はこの一例のみで、MOS界面欠陥のEDMR評価は行えなかった。EDMR分光装置の中核となる「マイクロ波ソース」が経年劣化のために使用不能となってしまったからである。メーカーのドイツ本社での修理もできなかった。EDMR実験再開のためにマイクロ波ソースの自作化が必要となり、最終的に日本メーカー(アンリツ)の20GHz信号発生器+ベクトルネットワークアナライザで可能であることに目途をつけ、その手配を行った。
【研究代表者】