糸状菌キチン合成酵素と相互作用するタンパク質の網羅的同定・解析とその有効利用
【研究分野】応用微生物学
【研究キーワード】
キチン合成酵素 / Aspergillus / ミオシン / 隔壁 / アクチン
【研究成果の概要】
我々のグループではこれまでに糸状菌Aspergillus nidulansより5種のキチン合成酵素遺伝子(chsA-D、csmA)を単離しその機能解析を行ってきた。本プロジェクトではこのうち4種のキチン合成酵素ChsA-C、CsmAにそれぞれタグをつけたものについて細胞内の局在部位の検討を行った。その結果、ChsAは形成中の隔壁、それ以外のものは形成中の隔壁と菌糸先端に主に存在した。このうちこれまでの研究から機能が重複していると考えられたChsAとChsCについて共局在を検討したところ、一部局在が重なるものの、完全には一致しないことが明らかとなった。またウェスタン解析の結果から、これらのタンパク質は少なくとも一部細胞内で修飾を受けた形で存在することが示唆された。ChsBについても細胞内で修飾を受けていることが示されたが、その一部はリン酸化であることも明らかになった。一方、遺伝学的解析によりchsA chsCの二重変異株の生育にはcsmAが重要であることも示された。
CsmAはキチン合成酵素ドメインのN末端側にミオシン様タンパク質をコードするドメイン(MMD)が存在する。CsmAの細胞内での存在部位はアクチンの集中する部位と近接していたためMMDの種々の改変体を作製しその影響を見たところアクチンとの結合能を持たない改変型MMDをもつCsmAはその局在も異常になり、その機能も失っていた。さらにA.nidulansのゲノム配列が公開され、csmAのパラログがA.nidulansのゲノム上にもう一つ存在することが明らかとなった。我々はこの遺伝子をcsmBと命名し機能解析を行った結果、csmBの破壊株は菌糸の途中が膨らむバルーンの形成、菌糸内菌糸の形成などcsmA破壊株と類似の表現型も示したが一部異なる表現型も示した。またcsmAとcsmBの変異は合成致死を示すこと、CsmAとCsmBの局在部位は完全には重ならないことが示された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】15,600千円 (直接経費: 15,600千円)