不規則で大きな場の変動による局所不均一凝固組織形成の解明
【研究分野】金属生産工学
【研究キーワード】
連続鋳造 / 凝固欠陥 / 数値解析 / 場の変動
【研究成果の概要】
連鋳鋳片の典型的凝固欠陥は、凝固関連技術の発達により現在はほぼ抑制可能となっている。しかし、局所的な中心偏析やブリッジングなどに起因する低頻度凝固欠陥の予測・制御方法はもとより、その成因理解もさほど進んでいない。連鋳鋳片の低頻度凝固欠陥生成には、溶鋼流動、バルジング、湯面変動などが複雑に作用しており、これらの要因を個別に評価することはきわめて困難である。そこで本研究では、低頻度凝固欠陥は不規則で大きな場の変動に起因するとの仮定の下に、多数の条件下で数値解析を行い、低頻度凝固欠陥の成因を解明することを目的とした。
本年度には、厚み100mm、200mmの鋳片が鋳造速度1m/minで鋳造される状況を想定し、鋳片厚の1/4あるいは3/4が凝固した時点(2条件)で、溶鋼凝固潜熱にして0.02〜0.2の熱量変動(10条件)が生じた際について、熱変動発生領域幅を10mm180mm変え、合計400条件についての解析を行った。解析結果より、熱変動発生部における凝固遅れをパラメータとし形成凝固組織の不均一度を定義し、熱変動量-熱変動領域幅を軸とした平面状に不均一度を整理した。この単純な整理では、熱変動量の増加、熱変動領域幅の減少につれ著しく凝固不均一度が増大する結果となった。そこで、熱変動量およびその領域幅の出現頻度は統計力学的確率により与えられるとし、各状態に指数関数分布確率を乗じることによる不均一度の確率分布を求めた。その結果、低い熱変動量によって発生領域幅が小さければ大きな不均一度となることが示された。これらは、学振製鋼19委員会における討議の結果、現場の経験とも一致するところも多く、今後も検討すべき課題と認識された。
【研究代表者】