組織における「分配の公正」と「自己実現」-仕事意識の日英比較研究
【研究分野】社会学
【研究キーワード】
人的資源管理 / 自己実現 / モティベーション / 雇用関係 / 仕事意識 / エンパワーメント / グローバル化 / イギリス / 自己組織性 / 人的資源政策 / 企業経営 / 企業活動 / 分配の公正
【研究成果の概要】
平成16〜18年度の3年間に計5回の研究会を開催し、メンバー全員で調査計画を策定、調査方法について議論し、調査結果を分析・解釈した。研究代表者・渡辺が中心となって、英国に所在する企業5社、日本国内に所在する企業6社、計11社において従業員・管理職・人事担当者を対象に面接調査を実施した。渡辺は平成16年に5ヶ月間、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に客員教授として滞在、さらに17年に2週間英国に滞在し、面接調査を実施した。この間、渡辺はLSEのアンソニー・ギデンズ教授と研究会を持ち、研究課題について討論した。またLSEにおいて"The Meaning of Work in Comparative Perspective : The UK : and Japan"と題する講演を行い、研究成果を発表した。日英両国での調査の結果、以下のような知見が得られた。
いずれの国においても、厳しい競争状況の中で社員の信頼とコミットメントを得るためには、評価と分配を正しく行うことがこれまでにも増して重要になっている。日英間で比較すると、人々の仕事意識や組織内行動のパターンにおける個別社会相互間の相違は縮小している。同じ職務階層で国別に比較すると、両国における意識や組織のあり方は収斂する傾向にある。しかし一方、職階による差異はより顕著になっており、4つの職階グループーすなわち(1)幹部経営者、(2)ゴールドカラー(管理職・専門職、起業家、コンサルタントなど)、(3)ブルーカラーおよびホワイトカラー下級職・サービス業雇用者、(4)フレックス雇用者(期間雇用者およびパートタイム雇用者)-に対しては、それぞれ異なったモティベーション政策が必要である。特に(2)と(3)に対しては、対照的なアプローチが有効である。「自己実現至上主義者」であり、仕事意識のポストモダン化が最も顕著である(2)に対しては、戦略的プロセスに参加させ、企画を実現する機会を与え、成果に見合った報酬を与えることによって創造的能力を発揮させ、組織の活性化を図ることができる。これに対し仕事そのものに意味を見出しにくい状況のもとで働くことの多い(3)に対しては、彼らの社会的欲求(集団や組織に帰属し、同僚や仲間に受容されたいという欲求)に応えることによってモティベーションを高めることができる。(3)に対しては、伝統的日本型経営の長所である「人間主義的アプローチ」の適用が有効である。さらに両国の組織では、日本型とアングロ・サクソン型の相互補完的な融合によるハイブリッド(混成)型の人的資源政策を職階別かつ重層的に適用することが有効であることが明らかになった。成果は著書として出版される予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
今田 高俊 | 東京工業大学 | 大学院社会理工学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
綿貫 譲治 | 上智大学 | 名誉教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】13,000千円 (直接経費: 13,000千円)